このところの当ブログで、2019年2月28日に77歳で亡くなった花柳幻舟さんのことを書いています。

「打倒・家元制度」を標榜して1980年に傷害事件を起こした花柳幻舟さんは逮捕され、服役します。その女子刑務所での経験が『獄中記』としてテレビドラマになり、幻舟さんは自ら主演されました。赤軍派とか子殺しとか、ワケありの女たちの群像劇みたいな感じで、宮下順子さんや白川和子さんなどが出ていたと記憶しています。日活ロマンポルノにも出ていた幻舟さんの縁での出演かもしれません。

花柳幻舟さんは「天皇制」は「家元制度」と同じようなものだという主張し、1990年には「平成天皇即位の礼」祝賀パレードに爆竹を投げ込む事件で再び服役しました。今度はその獄中体験をドラマ化することはありませんでした。幻舟さんの逮捕も2回目で視聴率的に「鮮度」が落ちたということなのか、あるいは今度は事件が事件だけにテレビ局が二の足を踏んだのかもしれませんね。

本業の「創作舞踊」の方では、その舞踊をフィーチャーした映画が海外のドキュメンタリー映画祭でグランプリを獲ったりもしているのですが、日本のマスコミではほとんど報じられませんでした。(映画関係の記事をくまなく読んでいた僕でもやっと知ったぐらいです) この黙殺も、「天皇制」をターゲットにした事件の性質ゆえかもしれません。

幻舟さんの『獄中記』ドラマは、のちに安部譲二さんがやはり実際の刑務所経験を基にしたベストセラーの映画化『塀の中の懲りない面々』(1987 森崎東監督)に繋がっているように思います。こちらも、安部譲二さんのモデルにした藤竜也さんを囲んで、ニセ医者(植木等さん名演!)、革命の闘士(柳葉敏郎さん)など様々な事情で服役する人間模様が描かれます。

囚人たちをサディスティックにいたぶる鬼看守(山城新伍さん)に対し、所内で禁止されている口笛を高らかに吹くシーンなど全篇に通底する「権力への抵抗」が痛快です。脚本を担当した鈴木則文さんの「反骨精神」と森崎東監督の「人間へのあたたかい眼差し」が見事に相乗効果をあげた名作でした。ケーシー高峰さんが、何とオカマの服役囚を演じていて笑わせてもらいました。

 (ジャッピー!編集長)