ひとつ前の当ブログで書いたように、10月1日に『ワンダーウォール』(1968 ジョー・マソット監督)を観ました。

はるか昔に、ジョージ・ハリスンさんの担当したサントラ盤『不思議の壁』は聴いたことがありましたが、映画は観たことがなかったので、上映してくれた新宿の「K’sシネマ」の「奇想天外映画祭’22」に感謝です。

「K’sシネマ」は、僕がかつて入り浸り「任侠映画」や「実録路線」を浴びるように観ていた「新宿昭和館」の閉館後、同じ場所にオープンしたミニ・シアターです。それらの映画と全く違うサイケな映画に、同じ場所で出会うというのも感慨深いものがあります。

『ワンダーウォール』は、老教授(ジャック・マッゴ―ランさん)が主人公です。この人は研究のことしか頭にない変人ですが、ある日ふと、壁の穴から隣のアパートに越してきた若い女性の裸体が見えて、以後「のぞき」に没頭します。この女性に扮するのが、ジェーン・バーキンさんで、何と一言も台詞がありません。ただ「見られる」だけ。ある意味、オブジェというか、教授の妄想のような存在です。

「のぞく」ことに夢中になった教授はついには部屋を改造し、「のぞき」を最優先した生活になって研究室にも行かなくなってしまいます。教授のくすんだような部屋と、派手な色彩が夢魔的な空間を作るバーキンさんの部屋。この「幻想」のようなある種「異世界」へのトリップ感に、ジョージ・ハリスンさんの作ったインド風な音楽が妙に合っていました。

この「現実」と「幻想」の境界が「ワンダーウォール」なわけですが、サントラ盤のジャケットは「モノリス」のような大きな壁の左側に老紳士がポツンと佇み、右側には池で何人もの裸の女性が水浴?しているサイケなイラスト。紳士は別に「のぞき」しているわけでもないし、抽象的なジャケットと思っていたので、こういう映画だったとは想像もしなかったなあ。

映画は、教授はさらに天井にも穴を作り、バーキンさんに近づこうとします。というわけで、僕は江戸川乱歩さんの「屋根裏の散歩者」を思い出したりしました。映画化もされていますよね。『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』(1976 田中登監督)です。 江戸川乱歩さんの世界にドラッグ・カルチャーをまぶしたような映画でありました。(ジャッピー!編集長)