ひとつ前の当ブログの続きです。

『人斬り』(1969 五社英雄監督)で、薩摩の「人斬り」田中新兵衛に扮した三島由紀夫さんは出番は少ないものの、圧倒的な存在感をはなちます。

「坂本龍馬を狙っている」と言って登場したのと同じ居酒屋で、新兵衛と以蔵(勝新太郎さん)は再会します。このとき、以蔵は武市半平太(仲代達矢さん)に放り出され、飲み屋の払いもできなくなっています。落魄の以蔵に、新兵衛は「あこぎなマネをするな、土佐藩も」と言って去っていきます。

このあと、新兵衛は自分がやっていない「暗殺」の濡れ衣を着せられます。攘夷派がかついでいた公卿(仲谷昇さん)の暗殺を以蔵に命じたとき、武市が渡したのが「新兵衛の刀」だったのです。薩摩藩のせいにして、主導権を握ろうとする土佐の陰謀なのです。新兵衛は「断じてそんなことはしていない!」と言いますが、取り調べの奉行に証拠の刀を突きつけられると、いきなり「切腹」してしまうのです! このシーン、本当に間髪入れずという感じなので初めて観る人は驚くと思います。

この切腹シーンの迫力たるや! この翌年、1970年11月25日に本当に切腹する三島由紀夫さんの中には、その決意がもうあったのかもしれません。三島さんはカットの声がかかっても、刀から指がはがせないほど力が入っていたといいます。鍛え抜かれた腕にうかぶ血管、鬼気迫る表情、僕はこの場面を観るために何回もこの映画を観ております。

三島さん演じる田中新兵衛はおそらく、自身の刀を盗まれるという失態への責任、疑われるような自分への恥、そういったものが言い訳ひとつせず即「切腹」という行動に出たのだと思います。この潔さ! 見苦しい言い訳を重ねて、責任を何一つとらず、当たり前のように居座っている政治家どもに見せてやりたいです。その代表であるアベ晋ゾーに「国葬」とは何と恥ずかしいことをするのでしょうか。(ジャッピー!編集長)