当ブログ9月23日「大河ドラマのショーケン、『勝海舟』の人斬り以蔵と『太平記』の病気降板」に書きましたが、『勝海舟』で萩原健一さんが演じた岡田以蔵は、元々、倉本聰さんが「ゲイ」と

想定していたそうです。それに応えたショーケンの「人斬り以蔵」、無鉄砲さと甘えん坊なところが混在するような人物造型が良かったです。

「人斬り以蔵」を主人公にした映画があります。勝新太郎さんが「岡田以蔵」を演じた『人斬り』(1969 五社英雄監督)です。ショーケンの「以蔵」と違って、こちらは男くさい、熱血な感じの「以蔵」で、勝新太郎さんのキャラクターによく合っていました。

無茶苦茶な剣ながら、腕を見こまれた以蔵は、土佐藩の攘夷派・武市半平太(仲代達矢さん)に雇われ、次々と暗殺に手をそめます。当時の政治状況など分からぬままに、カネをもらい「人斬り」をしている以蔵。自分では世の中のためになっていると思っていますが、利用されているだけです。武市は陰では「飼い犬」と呼んでいるように、使えるだけ使ってポイ捨てという扱いです。

なじみの女郎(倍賞美津子さん)に、「あたしは30両という借金、そしてあんたは武市さんの藩とかに縛られて、決して自由になれないのよ……」と言うのが的をえています。

武市の非情さに一度は「縁を切る!」と言った以蔵ですが、それまで土佐藩のツケで呑んでいた飲み屋にも出禁になるなど、たちまちカネに困って、結局は武市に詫びを入れ、さらに汚い仕事を申し付けられます。

最後、以蔵も武市も捕まりますが、はりつけ獄門の以蔵は、役人から「武市は政治犯だから切腹だ」と聞かされます。以蔵は「そいつは良かった。死んでからもあいつに引っ付かれていたら、自由になれねえや。これでやっとあいつから自由になったんだ」と言います。

さんざん踏みつけられ使い捨てになった男は獄門、ただ藩の幹部だったというだけで「切腹」という栄誉?の死が対比され、映画は終わります。そういえば、長く首相の座に居座って世の中を悪くした男が「国葬」されるっていうのも理不尽極まりないですね。 (ジャッピー!編集長)