ひとつ前の当ブログで、『にっぽん昆虫記』(1963 今村昌平監督)の撮影現場で北村和夫さんが底なし沼に沈められたエピソードを取り上げました。

『にっぽん昆虫記』(1963 今村昌平監督)の主役は左幸子さんで各映画賞で女優賞を獲得しましたが、この役には高千穂ひづるさんも名乗りをあげたそうです。北村和夫さんに乳を吸われるシーンもある役ですが、気鋭の監督の作品で女優としての新境地に挑戦しようと思ったそうです。結局、左幸子さんが射止めたわけですが、「後で観て、この役は左さんが合っていた」と納得したそうです。ということを、以前に高千穂さんのトークショーを観たときにうかがいました。(当ブログ2021年5月11日「二出川延明さんの娘・高千穂ひづるさんの女優魂」にも書きました)

そんな高千穂ひづるさんは宝塚歌劇で大活躍、東宝で映画デビューも果たします。『ホープさん サラリーマン虎の巻』(1951 山本嘉次郎監督)です。面白いことに、東宝映画ながら、出演者の一枚目に、「小林桂樹(大映)、高千穂ひづる(宝塚)、関千恵子(大映)」と3人とも()付きの名前が並びます。主演の小林桂樹さんはこの実直なサラリーマン役がハマり、翌年に東宝に移籍し、『社長』シリーズなど東宝お得意のサラリーマンもので活躍します。

『ホープさん サラリーマン虎の巻』は当時人気の源氏鶏太さんの原作。小林桂樹さん扮する京太は大学野球部出身だが、試合には出ていない万年補欠。入社試験には何と母親(三好栄子さん)が付いてきて、「お前は人を押しのけるようじゃないと」と、自分の番じゃないのに面接室に押し出すのが笑えます。

入社し、寮に入った京太は泥棒に入られ、一張羅の背広を盗まれてしまいます。しかたなく会社の野球部のユニホームで出社。事情を聞き、「気の毒ね」と隣席の高千穂ひづるさんが「兄の形見ですけど……」と言ってそっと背広を貸してくれます。(この項、続く) (ジャッピー!編集長)