ひとつ前の当ブログで、内田裕也さんと島田陽子さんの出会いとなった『花園の迷宮』(1988 伊藤俊也監督)を取り上げました。

伊藤俊也監督は梶芽衣子さんが寡黙のヒロインを演じた『女囚701号 さそり』(1972 伊藤俊也監督)などで知られていますが、萩原健一さんを起用して名作を撮っています。『誘拐報道』(1982 伊藤俊也監督)です。

実際にあった誘拐事件を元にした「読売新聞大阪社会部」のノンフィクションが原作です。ショーケンは借金に追いつめられ、子どもを誘拐し身代金を要求する犯人役。当時、ショーケンはいしだあゆみさんと暮らしていましたが、いしださんのお母さんにはずいぶん反対されたそうです。何でも、お母さんの家の近所で起こった事件だったそうです。

『影武者』(1980 黒澤明監督)の現場でいろいろ大変な目にあったショーケンですが(当ブログ9月20日~21日参照)、黒澤監督から受けた影響を実感したそうです。それまで、ショーケンはテストでは抑えていて、徐々に上げていくという演技プランでやっていたそうです。少しづつ肩を温め、本番で最高の投球ができるよう逆算していたわけです。ところが、黒澤監督は「テストの最初から思い切りやれ! どこからが本気か分からないと、注意できないだろ!」と怒られ、最初から全力投球するようになったのです。

その「初めからリミッターを外す」やり方を『誘拐報道』の撮影現場でやると、伊藤監督からは「あんたは、何度もテストするとよくないようだね」と言われてしまったそうです。そこで、この映画では「一発」で撮ることが多かったそうです。なので、ショーケンを放置?し、シナリオにない場面もあったそうですが、これが迫真のリアリティを生みました。ショーケンの演技も鬼気迫るものがありました。

監督の演出方法というのも人しれぞれ、それに合わせて最良の演技をしなければならないのですから俳優も大変です。いろいろな「引き出し」が必要になりますね。(ジャッピー!編集長)