ひとつ前の当ブログで、ジャン・ギャバンさん主演の名作『ヘッドライト』(1956 アンリ・ヴェルヌイユ監督)のリメイク映画、仲代達矢さん主演『道』(1986 蔵原惟繕監督)は当初、高倉健さんが主演の予定だったという話を書きました。

高倉健さんは慎重に役を選ぶことで知られていますので、このように健さん出演予定が流れたケースはけっこうあります。よく知られているのが、『太陽を盗んだ男』(1979 長谷川和彦監督)で沢田研二さんと対決する刑事(菅原文太さん)は最初、健さんにオファーがあったのです。

長谷川監督は健さんに4時間もかけて出演交渉をしたのですが、健さんは「原爆を作る方をやらせてくれないか」と、刑事ではなく、ジュリーの演じた役の方を希望したのだそうです。長谷川監督が「健さんがやると理由とか大義がある役になってしまう。これはもっとちゃらんぽらんなヤツの理由なき犯罪なのだ」と説明したけれど、健さんの「犯人役」希望は覆らず、実現しなかったのです。(このことは当ブログ2021年10月14日「『新幹線大爆破』と『太陽を盗んだ男』のキャスティングはもしかしたら……」に詳しく書きましたのでお読みください)

もう一本、健さんがオファーを断った作品に、『乱』(1985 黒澤明監督)があります。主演ではなく、脇の役ですが、天下の黒澤明監督作品ということもあり、健さんは出演するかと思ったのですが、受諾しませんでした。一説には、『居酒屋兆治』(1983 降旗康男監督)への出演が決まっていて、義理固い健さんは先約を守り、掛け持ちをするのを良しとしなかったので断ったと言われています。

そんな健さんだから、『居酒屋兆治』に出ていながら、自分が予定していた『お葬式』(1985 伊丹十三監督)のために動いていた伊丹十三さんを劇中で本気で殴ったのかもしれませんね。(←この件は当ブログ2021年10月26日ご参照ください) (ジャッピー!編集長)