ひとつ前の当ブログで取り上げた『スペクトルマン』は1971年1月に放映開始したので、同年夏休み公開の『ゴジラ対へドラ』(1971 坂野義光監督)よりも早く、公害怪獣が出ていたわけです。

「公害」をモチーフにした怪獣ということもあるのか、円谷プロの怪獣に比べて造形がグロテスク、はっきり言えば不格好、かつ、ちょっとチープな感じがしました。既に書いたように、後半は「公害」怪獣に限らなくなりますが、「クルマニクラス」なんかは車の増大による交通事故を背景にしているから一種の公害です。やはり社会問題が取り上げられているわけです。

そんな中、「カバゴン」という怪獣が登場した回がありました。

そう、「カバゴン」とは当時よくテレビに出ていた教育評論家・阿部進さんの愛称ですが、その阿部進さん本人が小学校の先生役(授業をするシーンもありました)で登場、ゴリに改造され「カバゴン」になってしまうのです! 実際の本人の愛称から怪獣が誕生するという展開、今だったら、尾木ママを改造して「オギママゴン」なんて怪獣を登場させる感じでしょうか。ちょっと記憶が不確かですが、たしか「カバゴン」は阿部先生のクラスの生徒に操られて大暴れする怪獣でした。ある意味、校内暴力(先生、生徒双方のストレスとか)などの先取りをしていたとも言えます。 

阿部進さんは元々、小学校の先生をなさっていて、その経験に基づいて独自の子ども論、教育論を著し、テレビに出るようになります。覚えているのは、当時PTAからやり玉にあがっていた永井豪さんの『ハレンチ学園』を支持していたことです。(テレビの『ハレンチ学園』の予告に出ていました!) 

伸び伸びと育てるという主義だったのでしょうか、裏を返せば、高度経済成長を経て、暮らしに余裕が出てきた時代、「教育ママ」とかが出てきていたということですね。それに対するアンチとして阿部さんが登場したのでしょう。「スカートめくり」とか当時は問題になったけど、「いじめ」、「モンスター・ペアレンツ」などが横行する今から見ると、昭和は牧歌的でしたねえ。

「全国こども電話相談室」でも活躍された阿部進さんは2017年8月10日、87歳で亡くなりました。健在だったら、この令和の子どもたちをめぐる問題、教育格差、ヤングケアラーなどについて、どんなことを語ったかなあ。   (ジャッピー!編集長)