このところの当ブログで、「平成」元年に観た映画や「平成」最後の日に観た映画について書いています。

その「平成」は2019年4月30日に終わり、5月1日をもって、元号が「令和」に代わりました。出典は「万葉集」の梅花を詠んだ歌を集めたコーナーの序文ということです。「時は、初春の令月にして、気淑く風和らぎ……」という箇所から、「令」「和」の二文字をとったとのことです。発表されたとき、当時の首相・アベ晋ゾーが「初めて国書を典拠としており……」とドヤ顔で語っていました。(ああ、気持ち悪い) 

しかし、この序文にしたって漢文調で書かれているんだし、そもそも「文選」の中にある句を踏まえているそうです。「梅」や「蘭」も元々、大陸で好まれていた花らしいし。どうしたって、「漢文」の影響を受けているわけだし、純粋な「国書」なんてないんじゃないかなあ。それなのに「国書」を強調するところは、さすが「美しい国」とかいって、デタラメな国にしただけのことはありますな。

それはともかく、これで「万葉集」がプチ・ブームになり、あちこちの書店にも「万葉集」コーナーができたのを覚えています。実は「万葉集」という歌があるのをご存知ですか? 歌っているのは植木等さん。『クレージー黄金作戦』(1967 坪島孝監督)の冒頭に歌われます。作詞は永六輔さん、作曲は中村八大さんという「上を向いて歩こう」コンビです。

いきなり尺八が響き「世の中は~空しきものと~知る時し~」と朗々と詠まれて始まるので意表をつかれます。それが、♪千年以上も昔の男が~ 今と同じようなグチこぼす~何とかしようよ まるで同じじゃ~猿に顔向け出来ないよ~ とふざけた歌詞で軍歌調のメロディになっていきます。歌の締めはまた朗詠になって「万葉集~読んでつらつらおもんみた~植木等の学のあること~」となるので笑います。このシーン、お坊さん役の植木さんが法華太鼓片手に唄うのです。植木等さんのお父上が実際お坊さんだったことを知ってるとニヤリとするような配役です。

植木さんの役名は「町田心乱」、バクチ好きのC調坊主です。調子よくアメリカ駐在員になり、ハナ肇さん、谷啓さんとラスベガスに乗り込む……というストーリーで、「東宝創立35周年記念作品」として作られた大作なのです。ハワイやロスでもロケが敢行されました。日本映画でアメリカ本土ロケを行ったのは初めてだったそうですから東宝がいかに力を入れたかが分かります。ラスベガスの大通りをクレージーキャッツの面々が踊るシーンが有名ですね。交通遮断して撮ったこの場面、当時、アメリカ映画でも例がなかったそうですから夢のような素晴らしさです。

そういえば、「平成」も終わりに近づいた2019年4月29日の夜、NHKで、平成の『紅白歌合戦』の名場面集みたいなのをやっていて、植木等さんが「スーダラ伝説」を歌っているシーンが映りました。(1990年=平成2年) 歳をとられても、元気でパワーいっぱいのパフォーマンスに見入ってしまいました。「平成」を飛び越えて、植木さんが明るく照らし出した「昭和」を思い出したのでした。 (ジャッピー!編集長)