ひとつ前の当ブログで書いたように、『トラック野郎 突撃一番星』(1978 鈴木則文監督)で桃次郎(菅原文太さん)に一目惚れ、猛アタックをかける樹木希林さんは自らのアイデアで「出っ歯」の入れ歯で怪演していました。

そういえば、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『万引き家族』(2018 是枝裕和監督)でも、樹木さんは入れ歯を入れて演じていましたが、さらにそれをはずす場面も撮っていました。これも樹木さんの提案だったそうです。

樹木さんは『歩いても歩いても』(2007 是枝裕和監督)以降、是枝作品の常連になりますが(全部で6本に出演)、小学生の頃テレビのホームドラマ好きだったことを公言している是枝さんにしたら、樹木さんの起用というのは必然の流れかもしれません。樹木さんは撮影時に是枝監督にいろいろアイデアを出し、それでディテールが豊かになったといいます。

昭和のテレビっ子だった僕にとっても、樹木希林さんはテレビの「悠木千帆」のイメージが強いです。同時期に放映されていたTBSの大家族ホームドラマ、『ただいま11人』、『七人の孫』の2作、前者から『肝っ玉母さん』、『ありがとう』、『渡る世間は鬼ばかり』へと、後者から『時間ですよ』、『寺内貫太郎一家』、『ムー』と2つの系譜を生み出しました。

特に、『七人の孫』は森繁さん主演ですから、脚本にないアドリブも発されたかと思います。たしか、森繁さんが視聴者に向けてトークするコーナーもあったとかすかに記憶します。(←この辺のヴァラエティーぽい所が後年の『時間ですよ』などに繋がっていますね) 

お手伝いさん役で出ていた悠木さんもその影響を受けていると予想されます。『時間ですよ』以降、悠木さんは堺正章さんや、その時々の新人(浅田美代子さんなど)と組んで劇中にコントぽい場面を演じますが、即興らしい面白さがありましたね。特に、堺正章さんも芸達者な方ですから、このアンサンブルで演技の呼吸に磨きがかかったように思います。樹木さんが出演映画で豊かなアイデアを出す自在さは、長い現場での経験の集積だったのでしょう。 (ジャッピー!編集長)