当ブログ12月28日に「小松政夫さんの名演『居酒屋兆治』」で書いたように、『居酒屋兆治』(1983 降旗康男監督)で、奥さんを亡くしたタクシー運転手を演じた小松政夫さん、好演でした。
僕が、映画で最後に小松政夫さんの姿を観たのは『麻雀放浪記2020』(2019 白石和彌監督)でした。ご存知、阿佐田哲也さん原作で和田誠さんの監督デビュー作として映画化もされた作品のリメイク?です。小松政夫さんが演じたのは「出目徳」。『麻雀放浪記』(1984 和田誠監督)では高品格さんが演じ、各映画賞で助演男優賞を得ました。ちなみに他の役を旧作と比べ並べると、坊や哲(真田広之さん→斎藤工さん)、ドサ健(鹿賀丈史さん→的場浩司さん)、女衒の達(加藤健一さん→堀内正美さん)、ママ(加賀まりこさん→ベッキーさん)となります。
映画は、1945年、坊や哲ら4人が卓を囲み、小松さん演じる出目徳が「明日は雨かな……」と呟くお馴染のシーンから始まります。しかし、そこで雷が落ち、哲が2020年にタイムスリップしてしまうというぶっ飛んだ展開になるのです! 哲がやって来た2020年というのは、何と、3月まで戦争があって、日本は敗戦、2020年東京オリンピック・パラリンピックは中止になった「戦後」なのです。
映画の中の「戦後」はAIが幅をきかせ、人間の仕事を奪ってしまい、失業者だらけです。その混沌とした中、坊や哲は昭和から来たフンドシ雀士「昭和哲」として売り出し、ネット麻雀で大人気になります。一方、「AI五輪」を企むピエール瀧さんが暗躍し、AI雀士・ユキ(ベッキーさん)を作り出し、哲たちが対戦します。あらゆるイカサマを瞬時に見抜き、自分もイカサマ積みをやるAI雀士が恐ろしいです。
「昭和哲」の仕掛け人の竹中直人さんが調子こいて「フンドシしゃぶしゃぶバー」を経営したり、VRを観ながらセックスしたりと、加速度的に発達するAI、デジタル技術に人間が駆逐されているのが、この映画の2020年、「戦後」なのです。しかし、考えてみれば、AIが万能になれば、人間無用になるような時代も来てもおかしくないなと思えてしまいます。
僕がこの映画を観たのは、2019年4月17日(池袋シネマ・ロサにて)ですから、まだ「平成」だったのです。この時はもちろん、コロナなんて影も形もなく、東京オリパラに盛り上がっていた?ときでした。しかし、今、振り返ってみると、コロナは「戦争」ではないですが、世界が巻き込まれ、2020年五輪が延期となったという現実世界を何だか予見していたように思えてしまいます。 また、この映画はピエール瀧さんが逮捕される前に作られたのですが、シャブをうつシーンや、謝罪会見する場面があり、そういう点でも予見していたような……。 (ジャッピー!編集長)