さらに「石岡瑛子展」を観に行った話の続きです。

『ミシマ』(1985 ポール・シュレイダー監督)の見事な美術で、初めて映画に関わった石岡瑛子さんは、次いで『ドラキュラ』(1992 フランシス・フォード・コッポラ監督)の衣装デザインに起用されます。何でも、『地獄の黙示録』(1979 フランシス・コッポラ監督)の日本版ポスターをコッポラ監督がえらく気にいって、オファーが来たそうです。

この『ドラキュラ』で、石岡さんは第65回アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞するのですが、その衣装も展示されていました。従来のドラキュラの衣装イメージを覆し、まさに「レヴォリューショナリー」な仕事だと思いました。

そして、展示の第3部。これは圧巻でした! 『ザ・セル』(2000)、『落下の王国』(2006)、『白雪姫と鏡の女王』(2012)といったターセム・シン監督とのコラボレーションのコーナーです。石岡さんがこれらの作品に用意した衣装の展示と、大きく映し出される映像に眩暈がする思いでした。特に『落下の王国』(好きな映画です!)の映像が展示場の壁面いっぱいに映し出されたのは体がふるえました。『ザ・セル』の夢の中の場面、石岡さんの細かい指示メモも展示されていて、この拘りが世界観を作り出すのに大きな役目をはたしていたのが分かります。

これらの衣装を見ると、東洋的なものをうまく取り入れてるなあと、あらためて感じました。そういえば、石岡さんの「パルコ」のポスターに「西洋は東洋を着こなせるか」という印象的なものがありましたから、このモダンとエスニックのハイブリッドは石岡さんの核にあったのでしょうね。

さらに「シルク・ドゥ・ソレイユ」、「北京オリンピック」などの大きなイベントの仕事も展示され、真の意味でグローバルに活躍した人だったことが実感させられます。この展覧会は、石岡さんの仕事を年代順に追っていく構成になっていて、それは、「広告デザインから映画美術や衣装、オペラ、イベントへの拡大」、「日本から世界への拡大」、という二つの意味でフィールドが拡大していく様が明確に分かるようになっているのです。

展覧会は、最後に石岡さんが高校生のときに描いたという絵本「えこの一代記」が展示されていました。すでに「世界の人々に向けるように英語で書かれている」この絵本にこめられた思いは、デザインという言語で達成されたのです。石岡さんの仕事の熱量に圧倒されながら、気がつけば3時間半の時間が経っていたのでした! (ジャッピー!編集長)