ウルトラマンのスーツアクターになった古谷敏さんですが、着ぐるみに入ると「人間ってこんなに汗が出るんだ」と思うほどの汗だらけになったそうです。『ウルトラQ』でケムール人やラゴンの中に入ったとき、控室が粗末だったり扱いがひどかったので、円谷プロのメイン脚本家で「ウルトラ」シリーズの重要人物・金城哲夫さんに直訴して、シャワーをつけてもらったり環境を改善してもらったそうです。そんなこともあり、古谷さんは「かっこいいウルトラマンを作るぞ」と決意したのです。

ウルトラマンが怪獣に対峙するときのちょっと前かがみのポーズは、ジェームズ・ディーンさんをヒントにしたものです。古谷さんがジェームズ・ディーンさんの大ファンで『理由なき反抗』(1955 ニコラス・レイ監督)の中でナイフを持って前かがみになって決闘するポーズがかっこいいので参考にしたそうです。顔は出せないとはいえ、やはり古谷さんも俳優です。怪獣と戦う撮影時にこのポーズをとるとジェームズ・ディーンさんの気持ちになっていたといいます。

また、必殺のスペシウム光線のポーズは監督から「水平の手は防御、垂直の手は攻撃」「腰を少し落として構えて」「立てた手が顔にかぶらないように」「カラータイマーも隠さないように」など次々に指示がとんで、OKが出たときにはヘトヘトになってしまったそうです。着ぐるみ、仮面をつけたままなので、手の位置の感覚もつかめなかったでしょうから無理もありません。それでも、ウルトラマンの決めポーズですから、一日の撮影が終わってどんなに疲れていても帰宅してから、鏡に向かって一日300回(!)練習したといいます。そんな努力があって、あのポーズが完成し、日本中の子供たちが真似したわけなのです。

僕も子どもの頃に撮った写真を見ると、この「スペシウム光線」のポーズで写っているものがありました。(あとは、イヤミの「シェー」のポーズの写真もあり) きっと、当時の子どもなら、このポーズの写真は日本中にずいぶんあるんじゃないでしょうか。 (ジャッピー!編集長)