ひとつ前の当ブログの続きです。あだ名があると、つかない子が出てしまうことに配慮して、あだ名を全面禁止する学校があるといいます。ここは、生徒同士同様で、先生にもあだ名をつけることを禁止しているのかな?

映画の中では、よく先生にあだ名が付けられます。『秋刀魚の味』(1962 小津安二郎監督)では、もういい年の笠智衆さんや中村伸郎さんが中学時代の恩師(東野英治郎さん)を「ひょうたん」と呼んでいましたね。

映画の中の「先生のあだ名」で印象的なのは、若き日の菅原文太さんに付けられた「カマキリ」です。映画は『見上げてごらん夜の星を』(1963 番匠義彰監督)です。元々は永六輔さん原作のミュージカルだったものの映画化です。たしかに、当時の文太さん、細くてカマキリぽいですが。

当時、荒川区南千住の街中にドーンと立っていた東京球場(大毎オリオンズ本拠地)のすぐ横にある定時制高校が舞台。(周囲が暗いため、光の球場と呼ばれていた東京球場を俯瞰で捉えた映像が貴重です)工場で働きながら通う坂本九さんのクラスメートもそれぞれが事情を抱えています。父親が前科者のために仕事につけないので家計を支える山本豊三さん、職を転々としている伴淳三郎さん、工場の仲間の中村賀津雄さんは父親が事故に遭ったため、夜も働かなければならず定時制も通えません。

ある日、九ちゃんの机に昼間同じ机を使っているという女子生徒(榊ひろみさん)から手紙が入っていて、そこから交流が生まれたり、苦難の中でも友情を信じ、前向きに生きていこうという若者たちの姿が描かれます。その手紙をくれた女の子はどんな美人かなあと九ちゃんやクラスメートの左とん平さん、林家珍平さんがそれぞれ想像するシーンがあるのですが、そのとき岩下志麻さんや桑野みゆきさん、倍賞千恵子さんといった当時の松竹若手女優のカットがインサートされるのが楽しいです。

そんな彼らの良き理解者である担任の先生を演じるのが菅原文太さん。生徒たちを下宿に呼んでスキ焼を食べさせるなど面倒見のいい先生ですが、その真面目さゆえ、生徒が辞めたりして自分が教師を続けていくことに自信を失い辞職すると言い出します。生徒たちもびっくりしますが、恋人(清水まゆみさん)に「あなたが学校を辞めたら、それは社会に負けたことなのよ!」と叱咤激励されて思いとどまります。『仁義なき戦い』(1973 深作欣二監督)まであと10年、文太さん自身も迷いの中にあったのかなあとか余計な想像をしてしまいます。 (ジャッピー!編集長)