今年の大河ドラマは珍しい平安時代。

それも貴族がメインの宮廷ドラマです。

今までにも「風と雲と虹と」「平清盛」「義経」「炎立つ」など平安時代を描いた作品はありましたが、全て武家もので貴族社会を描くのは初めてではないでしょうか?

その影響もあってか大河ドラマファンでも平安時代音痴な方が多いようです。


また、登場人物も主要な方は皆、「藤原」さんなので分かりずらいようです。

この時代、主要人物については意外と細かい資料は多いのですが、その周りの人物についてはよく分からない部分が多いので、脚本家の腕次第となりそうです。

どんな感じになるかなーと思って、既に3回まで見ていましたが、登場人物を見ていて何となく見えてきたので、今年もアンチョコを書いてみようかと思います。


今回は大まかな見どころを書き出してみます。

先バレが多く含まれますので、楽しく観るためのアンチョコと割り切れない方はこの先は読まないで下さい。


【ポイント①】

この時代、世の中を支配するのは人口の僅か1%にも満たない貴族です。

それも摂関政治においては最大派閥の「藤原」家、さらにその中の「氏の長者」と呼ばれる一家が中心となります。

とても狭い社会が舞台になります。


第一のポイントとしては、やはりこの「氏の長者」争奪戦の一族内での政争になります。

これが分からないと多分粗筋がチンプンカンプンになると思います。

丁度今描かれているのが、急激に力をつけ始めた藤原兼家が「氏の長者」となるため、ありとあらゆる策謀を図りライバルを蹴落としていく過程です。

現在は兄弟間での壮絶な戦いにやっと勝ち、他の藤原一族長老達と争っている最中ですね。

近々、花山天皇が即位しますが、これを騙して廃位させ円融天皇と娘詮子の子を一条天皇に即位させ、遂には「氏の長者」に成り上がります。


🔻権力欲の塊のような父上。しかし九条家を「氏の長者」とした立役者であることは間違いない


そしてその子供の、道隆、道兼、道長と入内した詮子の四人が登場していますね。

ここから先、兼家からの代替わりと共にこの三人の男子の政争が始まるわけです。

特に長兄道隆と三郎道長の一族の戦いは熾烈を極めます。どちらも優秀だったのです。

道隆の一族は後に中関白家と呼ばれるように栄華を迎えますが、最終的には道長が兼家の嫡流となり九条家を率いる事になります。


因みに藤原家の祖先は645年の乙巳の変(大化の改新)でお馴染みの中臣鎌足です。

その息子が奈良時代にかけて701年の大宝律令や日本書紀の編纂で活躍した藤原不比等です。

不比等には4人の息子いて、ここから4家に分家しました。

・武智麻呂(むちまろ)→南家

・房前(ふささき)→北家

・宇合(うまかい)→式家

・麻呂(まろ)→京家

この中で最も興隆したのが、後発の北家でした。

きっかけは810年の薬子の変に際して、北家の冬嗣が嵯峨天皇が設置した蔵人所の蔵人頭(くろうどのとう)に就任した事に始まります。

蔵人頭とは何か?

令外官の天皇直属の秘密機関の長です。

今で言うアメリカの大統領直属機関のCIAのようなものでしょう。

官位は低いのですが、大臣も触れられない第一級の仕事に携わります。

この冬嗣から三代にかけて天皇に徴用され外戚関係を維持し摂関政治のスタートとなりました。

因みに、ドラマ内で只今この仕事をやっているのが藤原実資です。

そうです。ロバート秋山さんですね。

非常に重要な役どころなのですが、良い味出してます。

かなり楽しみな部分なので、詳しくは改めて書きたいと思います。


もとにもどしますが、兼家の家系は藤原北家の中の九条家と呼ばれています。


🔻文武に長け、有職故実、漢文漢詩もマスターした道隆は誉高き中関白家として一目おかれる存在


🔻ドラマでは五男坊らしくのんびりした性格に描かれているが、やがて頭角を表して全ての政敵を排除して藤原最盛期を創出する


【ポイント②】

まひろはやがて紫式部となり、道長の娘彰子の専属家庭教師となる。

現時点では恋愛関係に発展しそうですが、道長の出世が凄まじく身分差が広がりすぎて恋愛対象ではなく、道長の出世を支える存在となります。

式部にとっては憧れの存在となっていくんですね。

道長が光源氏のモデルの一人とされる所以です。

そして二人の目的は道長の娘彰子を入内させる事。

道長は最終的に四人の娘の入内を成功させ堅固な摂関政治を完成させるが、彰子入内には強力なライバルがおり勝負どころとなるでしょう。

それが長兄道隆の娘定子でした。

定子は「氏の長者」となった道隆の掟破りの力技で一条天皇の中宮となり、中関白家の全盛期を築きます。

しかし、やりすぎ感もあり当時の貴族社会では疎まれる存在となっていきます。

道長はすかさずそこを突き娘彰子の入内を目指すわけですが、入内には高い教養を必要としました。

そのための英才教育の師が才女の紫式部でした。

しかし、中宮定子にはには式部も凌ぐ才女が家庭教師として付いていたのです。

これが清少納言です。

式部も上級貴族男子並みの漢文漢詩の知識がありましたが、清少納言はそれを凌ぎ当代第一級の知識を身につけていたと言います。

完全に男勝りの存在でした。

当時の女性が漢語を学ぶ事は良しとされず、代わりにカナ文字を与えられていたわけですが、その器では収まらない才女が引き立てられた時代だったわけです。

この二人の対決がどのように描かれるかは楽しみですね。

🔻道長とタッグを組み「氏の長者」を目指すのが中盤以降の見どころ

🔻上級貴族男子を超える知性と美貌を持ち合わせた清少納言は式部最大のライバル


【ポイント③】

その他、登場してくる?人物の見どころ

1.安倍晴明

安倍晴明は「陰陽師」などで単独で描かれる事が多いですが、実はまさに道長と同じ時代に生きた人で、藤原摂関家との関わりも深いのです。

道長も出世し始めると政敵が増え、しょっちゅう呪詛にかけられてしまいます。

その中でも中関白家との争いで晴明に匹敵する陰陽師蘆屋道満(あしやどうまん)によって命の危機にさらされ、晴明が式神を遣ってこれを解決する事件が起きます。

今回、晴明さんが良い感じで登場されているので、この辺も描かれる可能性がありますね。楽しみです♪



2.藤原隆家

大河ドラマと言えば、武士でしょうと言う事で、その辺りの人物は出てこないと今一つ物足りない感じがあるかもしれません。

実は凄い人が一人います。藤原隆家さん。

ライバル中関白家道隆の次男坊なのですが、道長一派に迫害されながらも黙々と外敵と闘い続けます。

実はこの時代、女真族(中国北部の一派)からの侵攻がありかなり危険な状態でした。

後の元寇と違い壹岐の部隊は全滅して人民の殆どは殺害、拉致されていますし、さらに上陸されて博多の警固の辺りまで実際に攻め込まれているのでかなりの大事件です。

ところが、この隆家が殆ど自らの手腕だけで見事に撃退させます。かなりカッコ良いはず。

まだキャスティングが発表されていないので、気になるところですが、期待したいです。

→追記☆隆家役は竜清涼さんが演じられるとの事です。


3.藤原実資

ロバート秋山さんの好演が光りますが、この人はキーマンです。実はこの方、道長たち九条家より藤原北家の本流に近い小野宮流の嫡流です。

本家の莫大な財産を相続している上、有職故実をマスターした当代一流の知識人でもあります。

本来なら「氏の長者」になって然るべき人物ですが、理性が邪魔して政争を嫌います。

九条家の事は批判的に眺めていますが、公明正大なところもあり、同調するべきところは認めたりもします。ご意見版的立ち位置で最後まで登場します。

ある意味、本物の貴族とも言えますね。

後に道長が最盛期を迎えたときに「この世をば我が家とぞ思ふ 望月の欠けたることも無しと思へば」と謳ったと記録されているのは、実はこの実資の「小右記」なのです。

道長自身の日記「御堂関白日記」の同じシーンには歌の記述は出てこないことから、実資が皮肉って書いた創作説もありますが、この辺がどのように描かれるかも楽しみです。恐らくラストシーンに近いところになると思います。




4.源信僧都

この方もまだキャスティングの発表がないので出てくるか否かとても楽しみなところです。

何故、この方を取り上げたかと言うと、実は紫式部が憧れたもう一人の人物だからです。

知る人ぞ知る「往生要集」を記した人物です。

この本は日本で初めて地獄の有り様を図解で描いた本で、この時代の知名度は道長以上です。

道長などは狭い貴族社会の人間にしか関わりはありませんが、源信は末端の農民から天皇にまで知られた存在でした。まさに時代の寵児です。

誰もが初めて地獄を意識し、これを逃れるために誰もが「南無阿弥陀仏」ん唱えるようになりました。

それは道長や、息子の頼通ですら例外ではなく、死の間際は仏像と糸で自らを結び、「南無阿弥陀仏」を唱えながら死んでいく事になります。

浄土教のはじまりです。


5.在原業平

リアル光源氏ですね。

かなり重なります。

ちょい出しで良いので登場して欲しい(笑)