先般、告知させて頂きました通り、YouTubeにて米村豊医師の最新情報の公開がありました。


諸般の事情で配信を見られない方もいらっしゃると思いますので、下記に講演内容のポイントだけまとめさせて頂きました。


まずは、2021〜2022年度の世界腹膜播種機構の腹膜播種治療の振り返りがありました。

コロナ禍でありながらも、盛んに治療は行われてきた様です。


そしてHIPEC(温熱化学療法)による腹膜偽粘液腫に関する予後エビデンスです。

やはり悪性度が高い場合は、予後も厳しくなりますが、たとえ悪性で再発を繰り返したとしてもHIPECを根気強く行い5年生存を克服できれば予後は改善して死亡する事は無くなることがわかっています。

🔺偽粘液腫内に含まれるがん細胞の性質により予後は変わります。しかし、たとえ悪性であってもHIPEC治療での5年生存がキーポイント‼️


次に、HIPEC時に必ず行われる減量手術についてのエビデンスです。

減量手術とは、再発、転移率が極めて高い腹膜偽粘液腫や腹膜播種の致命的な転移を事前に封じ込めるために原発である虫垂、卵巣以外に転移の可能性が高い臓器を事前に摘出しておく処置です。

主に腹膜、大網膜、小網膜、脾臓、胆嚢、横隔膜等を切除するケースが多いかと思われます。

これがHIPEC治療が大手術となってしまう所以なのですが、その必要性は下記グラフより一目瞭然です‼️


🔺低悪性(良性)、高悪性(悪性)に関係なく、減量手術において完全切除ができるか否かが、運命の分かれ道。

・目に見える癌→減量手術で完全切除

・目に見えない癌→HIPECで滅殺

このコンビネーションで戦うのが、HIPEC治療の肝です‼️


新しい情報としては、PCI値が3以下であれば、減量手術+HIPEC治療を行わずとも生存率100%であると言うデータ開示がありました。

この場合は、開腹手術は行わず、腹腔鏡HIPECのみの対処で大丈夫‼️との発表がありました。


🔺何と生存率100%です。必要に応じて腹腔鏡によるHIPECや抗癌剤による化学療法を実施していきます。


因みに、HIPECがよく分からない方には聞きなれないPCI値ですが、これは腹膜偽粘液腫、播種の重症度を判別する大切な指標になります。

腹部を13箇所に分類して偽粘液腫、播種の大きさ、分量をカウントしてその合計数で評価します。

もちろん数字が大きいほど重症度が高くなり完全切除も困難になります。

🔺最初の診断は造影CTやMRIを元に行われると思いますが、その際に使う指標になります。

残念ながら、これすらも知らない医師も多く、腹膜偽粘液腫、播種の根治治療は無理と判断できます。

また、実際には画像に写らず開腹してみないと分からないケースも多いので、画像段階でPCI値が4以上なら開腹手術を実施して確認した方が安全です。


ここで腹膜偽粘液腫、播種治療進化の歴史のご説明がありました。

🔺希少癌にも関わらず開発されてきた治療法は医師たちの並々ならぬ努力の結晶です‼️


ここで、数年前にフランス医師会が発表した「HIPECをしてもしなくても予後に差はない」と言う論文に対してエビデンスを元に正式に抗議を行った事が発表されました。

これは、HIPEC実施時における温度設定の重要性が強調されました。

少々難しい内容なので、簡略して書かせて頂くとHIPECにおいて癌細胞を100%滅殺するには43℃でなければ効果が不完全である事はエビデンスからも明らかなのですが、フランスが根拠としたHIPEC事例は41〜42℃で行われていた事が下記の資料から判明したそうです。

これは米村先生の研究の中でも最重要視されている事で、42.5℃でも43.5℃でも駄目なのです。

42.5℃では癌細胞は生き残る可能性がありますし、43.5℃では正常細胞も死んでしまい、術後合併症の危険性が高まります。

今回は詳細は省きますが、これさえ守られていないフランスのHIPECの効果で可否を述べられても話にならないと言う事ですね。



🔺「サーマルドーズの実際例」の上二つが正しい実施例で、下二つがフランスのもの。フランスはHIPECの効果は6〜25%程度で、実施していない場合と大して変わりはないと主張していますが、43℃で実施していれば33.7〜40.8%の効果が実証されています。


最後に、HIPECにおいても最新の化学治療の手法を取り入れており、事前に使用する抗癌剤の薬剤感受性試験を行なっており、患者に適した抗癌剤でHIPECを行う事でさらに効果をあげる事できているとの発表がありました。

🔺抗癌剤の種類も増え、癌の性質、状態、患者の体質によって向き不向きがある。

より適した薬を選択して使用する事で治療の効果を上げられる事が判明。


結論として、現在存在する腹膜偽粘液腫、播種の治療においては、「減量手術」+「HIPEC(温熱化学療法)」こそが最大の効果を上げる治療法であると語気強めて締めくくりとされました。

🔺今、最も理想的な治療法は事前に薬剤感受性試験で適する薬を見つけ、腹腔鏡HIPECを何度か実施し、できる限り播種を小さくさせて完全切除の可能性を最大限に高めてから本番の減量手術を行い、43℃の薬液でしっかり開腹HIPECを行う。さらに必要であれば術後化学療法で追い討ちをかけ癌を全滅させる手法です。


米村先生、お忙しい中、ありがとうございました。