2018年1月14日放送のNHKスペシャル「人体」第4集のテーマは「腸」に関する最新情報でした。

「腸」がほとんど無い私としては、教えて頂いても如何したものかとしか言いようがないわけですが、大切な情報なので備忘録としてまとめときます。



簡単に言うと、
食べた物を消化吸収する腸には、「全身の免疫を司る」という秘められた重要な役割があった事が解明されてきたという内容です。

最近話題の「腸内細菌」が、腸に集結する「免疫細胞」と不思議な会話を交わしながら、全身をさまざまな病気から守る「免疫力」をコントロールする仕組みをかなり具体的に解説しています。

乳酸菌や腸内フローラについては、私も以前に書いた事がありますが、何故乳酸菌が良いのか、腸とどのような関わりがあるのか?そのメカニズムについて解説されたのは初めてかもしれません。


腸は、食べ物だけでなく、それと一緒に病原菌やウイルスなどが常に入り込んでくる危険性のある場所です。

体内で最も密接に“外界”と接する臓器なので、病原菌やウイルスなどの外敵を撃退してくれる「免疫細胞」が大集結しています。

その数、なんと体中の免疫細胞のおよそ7割!それほど大量の免疫細胞が、栄養や水分を吸収する腸の壁のすぐ内側に密集して、外敵の侵入に備えています。

また、腸の中には、全身から寄せ集めた免疫細胞の“戦闘能力”を高めるための、特別な「訓練場」まで用意されていることがわかってきたそうです。

それが、「パイエル板」と呼ばれる、小腸の壁の一部に存在する平らな部分で、「パイエル板」の表面には、腸内を漂うさまざまな細菌やウイルス、食べ物のかけらなどの「異物」を、わざわざ腸の壁の内部(つまり体内)に引き入れるための“入り口”が用意されているそうです。

パイエル板
ぶつぶつした中央のへこみは、パイエル板にある“訓練場”への入り口
(画像:旭川医科大学 甲賀大輔/日立ハイテクノロジーズ/NHK)

そこから引き込んだ「異物」を、パイエル板の内側に密集する大量の免疫細胞たちに触れさせ、人体にとって有害で攻撃すべき敵の特徴を学習させているとの事。

こうした腸での訓練を受けた免疫細胞たちは、腸で守りを固めるだけでなく、血液に乗って全身にも運ばれ、体の各所で病原菌やウイルスなど敵を見つけると攻撃する“戦士”となる。

一見腸とは無関係に思えるインフルエンザや肺炎などに対する免疫力の高さも、腸での免疫細胞の訓練と密接に関係しているらしいことが、最新研究でわかってきたそうです。

腸はまさに「全身の免疫本部」と言えます。


ところが近年、体を守るよう腸でしっかり訓練されているはずの免疫細胞が「暴走」し、本来攻撃する必要のないものまで攻撃してしまうという異常が、現代人の間に急増しています。

それが、さまざまな「アレルギー」や、免疫細胞が自分の細胞を攻撃してしまう「自己免疫疾患」と呼ばれる病気です。

最新研究によって、こうした免疫の暴走が招く病気の患者さんに「腸内細菌の異常」が生じていることが明らかになってきたそうです。


日本でいま急増している「多発性硬化症」という病気。

免疫細胞が暴走して脳の細胞を攻撃してしまうという難病で、手足のしびれから始まり、症状が進むと歩行困難や失明などのおそれもあります。この病気の患者さんの便を調べると、ある特定の種類の腸内細菌が少なくなっていることが突き止められたそうです。

人間の腸内にいる腸内細菌はおよそ1000種類、100兆個以上とも言われています。

その中で減少していた腸内細菌が「クロストリジウム菌」という腸内細菌です。

およそ100種類いると言われる「クロストリジウム菌」の中で、ある種類が少なくなっていることが、どうやら「免疫細胞の暴走」と深く関わっているらしいです。

いま世界の研究者が大注目しているそうです。(クロストリジウム菌の中には、病気を引き起こす有害な菌もいます。)

生きた腸内細菌
密集する細かい線状のものが、世界で初めて腸内で高精細に捉えられた「生きた腸内細菌」
(マウスの腸内で撮影)

「クロストリジウム菌」という腸内細菌は、腸の中で何をしているのでしょうか?

これまで免疫細胞と言えば、外敵を攻撃するのが役目と思われていましたが、その逆の役割を果たしているようです。

仲間の免疫細胞の過剰な攻撃を抑える役割を持つことが突き止められ「Tレグ(制御性T細胞)」と名付けられています。

免疫細胞の中には、「攻撃役」だけでなく、いわば「ブレーキ役」も存在していたのです。

このTレグの働きで、全身の各所で過剰に活性化し暴走している免疫細胞がなだめられ、アレルギーや自己免疫疾患が抑えられていることがわかってきたとの事。

「クロストリジウム菌」は、腸内の「食物繊維」をエサとして食べ、「酪酸」と呼ばれる物質を盛んに放出します。

この「酪酸」が、腸の壁を通って、その内側にいる免疫細胞に受け取られると、Tレグへと変身するそうです。

もし腸内で「クロストリジウム菌」が出す「酪酸」が少なくなると、Tレグも適正に生み出されなくなると考えられます。


クロストリジウム菌
電子顕微鏡で捉えた「クロストリジウム菌」(画像:日東薬品工業)

訳の分からないアレルギーや自己免疫疾患。
Tレグを体内でほどよく増やすことができれば、これらの病気を抑えることが出来ると期待されているとのこと。

では、どうすればTレグを増やせるのか?

カギになっているのは「食物繊維」です。

古来、日本人は「食物繊維」を豊富に摂る食生活をしてきたので、この様な症状や病気に悩まされる事はほとんど無かったわけです。

ところが、とくに戦後日本人の食生活は大きく欧米的な食生活へと変化し、食物繊維の摂取量も減り、そうした急激な食の変化に、長い時間をかけて日本人の腸と腸内細菌が築き上げてきた関係性が対応しきれず、アレルギーや自己免疫疾患など「免疫の暴走」を増加させるような異変の一因となっている可能性高いと考えられています。

ワカメを消化できるのは日本人特有の能力だそうです。

そういえば、私はワカメを消化できません。
欧米人型になっていたのかもしれません。
で、免疫力が落ちて癌にやられてしまったのでしょう(笑)