のびのびと育てられたその人は
幼稚園に入った時にはすでに
集団に溶け込めない浮いた存在だった
小学校入学して浮いた存在のその人は
誰からも相手にされなくなった
やがてイジメが始まり
学校に行きたくないと泣いた
母親はせめて学力で見返せるような子にしようと、それまでの育て方から
教育熱心な育て方に変えた
漫画を禁止し
TVは夜の7時から8時の間だけしか見てはいけない決まりにし
見る番組も制限を設けた
夜の8時以降は勉強の時間とし
宿題がなくとも勉強をさせた
その人はクラスメイトとの共通話題を失い
さらに教室で浮いた存在となった
人の輪に入ることが恐怖となり
暗く俯いた子になった
小学校二年生の時には死にたいと考えていた
やがて第二次成長を迎え
身体が大きくなればイジメにあわないだろうと考えたその人は毎日牛乳を6リットル飲んだ
体力があればイジメにあわないだろうと考えたその人は体を鍛えた
対人恐怖症を克服しようとクラスの役員に立候補して無理矢理人前に立つ事に慣れようとした
それでもイジメはなくならなかった
少しずつ少しずつ
心を壊して
何度も何度も
心を殺して
やがてその人は感情表現を失い
自分が人間であることを忘れてしまった
三十数年の時が流れ
心から愛せる人に出会い
自らが人間である事を思い出し
泣いたり笑ったりする今の暮らしの中でも
今だに人の目は怖い
人の輪に入る事に躊躇してしまう
物理的にはマスクを付けていなくても
外に出ればこの顔はマスクのように
固定された表情を浮かべ続ける
44年生きていても今だに何が正解かはわからない
けれど私の目に映るあなたは
いつも美しく光り輝いていて
こんな出来損ないの私に
夢と希望を与えてくれる
少なくとも私にとってあなたは
何も間違えてはいない
その存在に
ただ
ありがとうと言いたい