「魔法の言葉 誠司」
「ねぇ おばぁちゃん、パパって魔法使いなの?」
絵本を読んであげていた、孫の優羽(ゆう)が、小声で聞いてきた。
「んーだって、
ママは『きれいね』とか『びじんね』って言われるのに、
パパは……普通だもん」
思わず、吹き出した。
子供なりに気を使って、普通と言っているらしい。
「だから、パパはママに魔法を使って結婚したんでしょ?」
母親ゆずりの、クリクリとした目をしながら、不安そうに聞いてくる。
「じゃあ、パパとママのお話し、してあげようね」
「うん!」
ゴホンっと大袈裟に、咳払いをして
優羽に話し始める。
「むかし、むかし…」
「どのくらい、昔なの?」
「優羽ちゃんが、生まれる前のお話しだよ」
「ある所に、誠司という、真面目な男がいました。」
「あ!パパだ!」
「そう、パパだね」
優羽ちゃんの目が、キラキラと輝きだしたのを見て、話を続けた。
――誠司は、お友達と一緒に、パーティーに出かけました。
パーティーには、
色々な色のキレイな飲み物と、
キレイな女の子たちがたくさん居ました。
キレイな女の子たちを楽しませようと、
お洒落をした、男の子たちが、おしゃべりをしました。
女の子たちが、喜んで笑うと、
男の子たちは、もっと、もっと喜んでもらおうと、頑張りました。
「僕の家には、可愛い犬がいるよ」
「僕の家には、たくさんの映画があるよ」
「僕の家の、テレビはすっごく大きいよ」
しかし、誠司の家には、犬もいないし、たくさんの映画も持っていないし、テレビも小さかったので、なにも言えず、黙っているしか、ありませんでした。
そのうち、男の子のひとりが
「じゃあ、今から、僕の車でドライブする?」
と、キラキラの鍵を揺らしました。
すると、今まで、無口だった誠司が突然
「おい!酒飲んで乗る気かよ!
女の子を危ない目に会わせる気か!」
と、急に怒りました。――
「え?なんで?パパは、優しいのに、どおして怒ったの?」
「あのね、お酒を飲んだ人は、車を運転しちゃ、いけない約束なの、とーっても危ないのよ」
「そっかぁー、ダメな男の子をパパが叱ったんだね」
「ふふ、そうね、ダメな男の子だねぇ」
そう言って、話を続けた。
――今まで、無口だった誠司が、怒ると、
キラキラの鍵を持った男の子が
「はぁ?何言ってるの?シラケさせるなよ、空気読めよ!」
と、誠司に、言い返しました。
すると、キレイな女の子の中でも、
とびきり可愛い、お姫様の様な女の子が
「あなたこそ、空気を読めと、いう前に、
交通ルールでも、読みなおしたら?
わざわざ、危ない目に会わせるなんて、
とっても、失礼じゃない?」
と、言って、誠司の前に立ち
「もし良かったら、
私と、もう一杯いかがですか?」
と、キラキラの笑顔で言いました。
誠司は、そのお姫様の様な女の子と、
たくさんのお話しをして、
二人は恋に落ち、
二人は結婚しましたとさ ――
「お姫様は、ママだったんだ!」
うれしそうに手を叩いた優羽は、
ちょっと首をかしげると
「でも、ドライブの人は、どうなったの?」と、聞く
「ドライブの人は、飲酒運転をしたので、警察に捕まって、沢山のお金を、無くして、車も乗っちゃいけなくなったんだって」
「そっかぁー バチがあたったんだね、
でも、やっぱりパパは魔法使いだね!」
「え?どおして?」
「だって、
お姫様と、結婚するのは、王子様だよ!
だから、パパは王子様になる魔法を使ったんだよ♪」
――確かに「飲酒運転をしてはダメ」という言葉には、少し幸せになれる魔法がかかっているのかも、しれないなぁと
私は、幸せそうな親子を見ながら思った。
この物語はフィクションです。
登場する人物、
団体、事故、名称等は架空であり
実在するものとは関係ありません。しかし、
飲酒運転をしてしまえば、
起こりうるお話しです。