おとうさん。明日は。本当だったら。花火大会の、日だよね。

  我が。この、住宅も。交通規制が、はられて。

   住宅の、入り口では。『ここは。住宅の、入り口です。』って。

   言いながら。役員さんが。門番を、するんだよね。

  去年も、おととしも。なかったんだけど。今年は、どうなのかなあ。おとうさん。

  おとうさんが。入院してた時。

   「あしたは、花火大会やね。おとうさん。」

   「ここは。花火を、見るんやったら。一等地やわ。」いうたら。

   中止に、なって。しまってね。

  あれ以来。おとうさんも。花火を、見ることも。なかったけど。

   花火大会も。立ち消えに、なって。しまったん、だよね。

  おとうさんの。ベッドの、横に。

   わたしの。ボンボンベッドを、置いてね。

  「もし。花火が。あがるん、やったら。あっちからやで。おとうさん。」

  「毎年、二人を。自転車に、積んでなあ。」

  「ここまで、来てたんやで。」

  「座るとこ、ないから。」

  「一人は。わたしが、だいて。」

  「一人は。おとうさんが、肩車してね。」

  「子どもたちが。花火が、上がる度に。」

  「すごいな。おとうさん。」

  「めっちゃん。すごいで。いうて。」

  「ふたりが。歓声を、あげて。」って。

  むかし。子どもたちと、見た。花火のことを。思い出しながら。

   二人で、話したんだよね。おとうさん。

  本当の、花火は。見れなくても。二人で。話して、いるだけで。

   あんなに。楽しかったのに、ねえ。おとうさん。

  「帰りに、ふたりが、寝てしまって。」

  「そうそう。自転車を、押しながら。団地まで、帰ったことも。」ってね。

   思い出話に、花を。咲かせたん、だよね。あの時は。おとうさん。

  今は。我が家の、ベランダからも。少し、見えるんだよね。おとうさん。

   たとえ、花火大会が、あって。花火が、見れたとしても。

   「ほら、おとうさん。」

   「見て。きれいやねえ。」って。

   言う、相手が。そばに、いてこそ。楽しいんで、あって。

    ひとりでは、ねえ。おとうさん。

   もしも。花火が、あったなら。

   せめて。空のうえから。

    「ここで。わしも、見とるから。」

    そう、言ってよね。  ねえ、おとうさん。