おとうさん。おはよう。

  『なんとかも。遠目で、見れば。美しい。』って、ね。

   遠くで、見るのと。なんでも、美しく、見えると、いうけれど。

  きのうは。なんとなく。

   この言葉の、意味が、分かったような、気がしたよ。おとうさん。

  「ああ、なんとかや。なんとかや。」って。

   うたに。よまれる、ような。景色でも。やっぱり、同じなんだって。

  「おかん。どうや。」

  「奇麗やなあ。」って。

  息子と。島の、入り口に、立ち。

  「ここが。例の、なに島やで。おとうさん。」

   いうてるときは。よかったんだよ。

  それが、ねえ。

  「おれ。前、来た時。船に、乗らんかったんや。」

  「乗せて、やるは。」いうて。

   乗せて。くれたんだよね。

  乗る前は。『こころ、ウキウキ。こころ、ワクワク。』だったんだよね。

   この景色を、舟の上で。見れるん、だってね。

   それがねえ。おとうさん。違うんだよね。

  ジグゾーパズルも。組み立てて、終わって。

   すべての、パーツが。そろってこそ。美しいんだよね。

   ひとつでも、かけると。その、美しさは。

    たちまち。消えてしまうん、だよね。

   それと、同じことかも。しれないよねえ。

  あの、景色も。それぞれ、ひとつずつ、では。だめなんだよね。

  すべての、パーツが、そろった、ものを。

   陸地から、見てこそ。それが、一番、美しいってね。

  それからね。おとうさん。

   身びいきと、言われるかも。しれないん、だけどね。

   自分の、そだった。海が。一番、きれいだってね。

  おとうさんとの、思い出の。いっぱい、つまってる。

   あの、海が。どこよりも。一番、きれいだってね。

   それに、勝ものは。どこにも、ないって。

   そう、思ったんだよね。おとうさん。

    おとうさんも。そう、思うでしょ。

     ねえ、おとうさん。