『五月雨の、降り残してや、・・・」ってね。

   今は、五月では。なくてね。七月、なんだけど。

  どうやら。あの、場所だけは。雨を。降り残して、くれたようですよ。

  朝は。あんなに、雨が、降ってたのに。お日様、カンカラカンでね。

   あそこに、行った頃は。

   ほんと。暑かったよねえ。きょうは。おとうさん。

  そういえば。おとうさんや、わたしが。子どもの、ころ。

   田舎芝居では。必ず。やってた、演目でねえ。

   義経だの、弁慶だのって。出てくるやつ。

   あれを。子どもの、頃から。よく。見てたよねえ。。

  だから。自然と。せりふまで、覚えてね。

  「落ち行く、先は。・・・」なんて。

  大人たちの、真似ををして。

   下手な、子供芝居を。みんなで、やって。遊んで、いたよねえ。

   その、落ち行く、先が。

    きょう。行ってた、ところ。なんだよね。おとうさん。

  だから。

  「いっかい。行って、みたいのう。」って。

   おとうさん、行って、いたでしょ。

  『何とか、堂。』を。見たいってね。

  本当は、元気な時。一緒に、行ければ。よかったん、だけどね。

   その、思いは。叶わな、かったん。だけどね。おとうさん。

  きょう。わたしが。

  「おとうさん。しっかり。わたしに。しがみついて、いてよ。」

  「おとうさん。いっしょに、行こうよね。」って。

   言ったの。聞こえましたか。おとうさん。

   どうでしたか。おとうさん。満足ですか。

  今夜は。久しぶりに。みんなで。

   「わしが。弁慶じゃ。」

   「おまえが。義経じゃ。」いうて。

  田舎しばいの、まね事を。してた。あのころの。おとうさんの、話を。

   息子に。話して。あげましょうかねえ。おとうさん。

   おとうさんにも。あんな、お茶目な時も。あったんだって。

     ねえ。おとうさん。