おとうさん。きょうは。住宅の。掃除の日、だったんだよ。

   熱中症に、なったら。大変だからってね。

    いつもの。時間の、半分で。切り上げたん、だけどね。

   階段も。水をまいて、ゴシゴシ、やったんだよ。

    年に一度の、大掃除ってね。

    いつも、おとうさんが。頑張ってた、やつですよ。おとうさん。

  そうそう。大きな。セコイヤの木が、切られたでしょう。

   その、お陰かどうか。分らないん、だけどね。風の道が。変わりましたよ。

   窓から、入ってくる。風で、分るんですけどね。

   なぜか。我が家には。心地よい風が。

    入って、くるように。なったん、ですよねえ。有難いことに。

   切られた。セコイヤの、木には。申し訳、無いんだけどね。おとうさん。

  それからね。今まで。気が付かな、かったんだけど。

   「あれ。ネムノキと、違う。」ってね。

   一階の、奥さんが。喜んでいたんだよ。おとうさん。

   今まで、大木の、かげで。見えなかったのに。

    今は、見えるだよね。ここに、いましたよ。ってね。

   栄枯盛衰、世の習いって。いうけれど。

    こういう、ことかも。しれないよねえ。おとうさん。

  ネムノキは、上のほうに。花を、つけるから。

   上から見た方が、いいんだよね。おとうさん。

   我が家からは。少し、遠いんだけど。なんせ。我が家は、三階だもの。

    芭蕉じゃ、ないけれど。

   「ささかたや 雨にせいしが ねぶの花」ってね。

   バッチリ。ネムノキの、奇麗なお花。楽しめそうですよ。おとうさん。

  それも。おとうさんが、つかってた。

    仕事部屋やら。見えるん、だものね。不思議なことに。

   夕方から。咲く花だから。ちょうど、いいよねえ。おとうさん。

    夕食を、すませて。ゆっくりと。

   今夜は、二人で。花見と、いきますか。ねえ、おようさん。

    サクラじゃ、なくて。ネムノキの、花見ですよ。

     ねえ。おとうさん。