おとうさん。あしたから。学校は、夏休みになりますよ。

   子どもが、小さかった時は。

  「来月は。ちょっと。苦しいぞ。」ってね。

   来月、どころか。むこう、二三か月は。収入は。減ったんだよね。

  おとうさんは。仕事を、受けて。なんぼのもん。

   休めば。収入は。入って、こないん。だものね。

  それでも。子ども達の為に、セーブして。仕事を、断って。

   息子たちに。合わせて、くれて。いたんだよね。夏休みはね。

  そしてね。車で、色んなとこ。行ったよねえ。おとうさん。

   「なんでも、経験じゃ。」いうてね。

  そうそう。ラジオで、言ってたけど。

   今は、ねえ。あそこ。クジラと、泳げるんだって。数時間、だけどね。

  息子たちが。小さかった、時は。

   『クジラに。触らせてくれる、時間。』と、言うのが。あってね。

   わざわざ。時間待ちして。

    網で、囲われている。中にいる、クジラを。

    突き出た、桟橋から。触らせて。もらったん、だよね。

   覚えて、いるんで。しょうかねえ。おとうさん。

    「覚えとる」って、聞いたら。

    「覚えとる、覚えとる。」とは。いうでしょう、けどね。おとうさん。

  よく、見たのは。イルカショウ、だったよねえ。

   イルカだけでは、なくて。シャチや、アザラシと。一緒でね。

    どこに、行っても。やってたものね。

   アザラシや、シャチと。握手を、させて。やりたくて。

    順番待ちに、並んだりも。したよねえ。

   そうそう。一番、喜んだのが。

    イルカが、ジャンプしてね。

     『バシャン』と。水が、かかるやつ。

    息子たちは。

    「キャア、キャア。」いって。逃げるん、だけど。

    「わあ、びしょ濡れや。」いうて。

     言うくせに。

   ショウが、始まる前に。

    「どこに、座りたい。」って。二人に、聞くと。

   かならず。水しぶきの、飛んでくる。

    「こっち側の。席が、ええ。」いうてね。

   大波が。かかりそうな、席を。選んだん、だよね。

   おかげで。親の、私たちまで。びしょ濡れで、ねえ。おとうさん。 

  あの時は。大変だったけど。

   あれも、いまでは。いい、思い出だよね。

     ねえ。おとうさん。