おとうさん。おはよう。
季節は、だんだん、早くなるってね。
見かける花も。駆け足で。次に、次にってね。
夜明け近くに。アサガオだよね。
『東雲草』って、書いて。『しののめぐさ』って、よむんだけど。
ほんと、朝起きて。きがついたら。咲いて、いるんだものね。おとうさん。
早起きなんだよねえ。アサガオは。
東の空が、明かぬまに。咲くんだものね。おとうさん。
息子たちが、小さい時。夏休みと、言えば。
必ず、もって。帰って、くるのが。
アサガオの、鉢植え。だったん、だよねえ。
アサガオ観察、だとか。言ってね。
そういえば。おとうさん。
「田舎に、帰ろうか。」いうて。早起きした時。
「アサガオの、花に。水やっとけや。」いうて。
おとうさんに、言われてね。水を、やろうとしたら。花が、咲いててね。
「おとうさん。アサガオ、咲いとるで。」
「おかしいんと、違う。」
「ほんまや。ほんまや。」
「まだ、外。暗いもん。」いうて。
子どもたちが、騒ぐもので。
おとうさんが。してあげたん、だよね。あの、話しをね。
「わしの、子どもん時の、話じゃ。」
「田舎じゃったら。アサガオは。庭で、咲いとるけえのう。」
「秋に、なっても。その辺で。咲いとった、もんじゃ。」
「夜中に。便所に、行きとうなって。」
「庭に、出たら。アサガオが。咲きかけ、とってのう。」
「ビックリしことが、あるんじゃ。」
「まだ。朝は、来とらんのに。思うてのう。」
「それで、学校行って。調べたんじゃ。」
「そしたら。アサガオはなあ。」
「日が沈んで。九時間あとに、花が咲く。いうことが。分かったんじゃ。」
「わしが、見たんは。秋口じゃったけえ。」
「夜中に、咲いても。当たり前、じゃったと。いうことじゃ。」
「その、アサガオ。大事に、しとけ。」
「そしたら。おまえらも。」
「夜中に咲く。アサガオの、花が。見られるけえ。」いうてね。
りちぎに。時間通りに咲く。アサガオの花の、話を。
してあげたん、だよね。子どもたちに。
二人の。幼稚園の、頃の。話だよね。
ねえ。おとうさん。