おとうさん。きょうは。お昼寝タイムを。ばっちり、とりましたよ。

  だってねえ。インコの『ぼた』も、コックリ、コックリ。なんだもの。

   笑うでしょ。おとうさん。

  田舎だったら。お昼寝と、いえば。畳の上に。ゴロリだよね。

   行儀わるいって。言われるかも、しれないんだけど。

    みんな、まくら、ひとつでね。ゴロリだものね。

   ちょっと、ひんやりして。気持ち、いいだものね。

  大広間に、大の字に、なってね。

   さしづめ。田舎の、夏の、ふうぶつしって。ところかなあ。おとうさん。

  我が家の、息子たちも。田舎に、帰ると。

   「蚊取り線香、けとばさんといて。」

   「おとうさんが、一番、ねぞう、わるいわ。」いうて。

    悪口言われて、いるのも。知らぬまま。

   親子三人。寝姿も、そっくりでねえ。

    よく、畳の上で。ゴロ寝を、していたよねえ。おとうさん。

  おとうさんが。マンションを。買ったとき。

   決め手に、なったのは。畳の、部屋だものね。

   あの時。世話してた。祖母の、ことを。考えてのことも。

    もちろん、あったんだけどね。

   「ここは。畳の、八畳が、あるんや。」いうてね。

   田舎の。『ほんけん畳』の、広さには。及ばないんだけど。

    嬉しそうに、していたものね。おとうさん。

   「おとうさん。布団、しこか。」いうても。

   「いらん。」いうて。

    畳の、上に。ゴロ寝してね。

   そんな、こと。思い出して、いたら。

  田舎も。ここも。ちょっと。古い、作りでねえ。

   使い勝手が、わるかったり。ガタが、きてたりと。

   思うところは。いっぱい、あるんだけどね。おとうさん。

  夏場の、この。昼寝の、ここちよさは。

   なにものにも、かえられない、ものが。あるんだよね。

   ちょっと。行儀は、わるいんだけど。

   畳の、上の。ゴロ寝に、しかない。心地よさがね。おとうさん。

  古い、人間て。言われるかも、しれないけどね。

    ねえ。おとうさん。