ほんと。わがやの、住人は。物持ちが、いいよねえ。おとうさん。

  イベントで、もらった。かわいいメモ帳まで。

   ちゃんと、大事に。とって、いるんだものね。おとうさん。

  みんなで、見学に行った。護衛艦。帰りにもらった、メモ帳ですよ。

   何年前、だったかしらねえ。おとうさん。

  「学校から。募集が、あったんやけど。おとうさんも、行こうよ。」いうて。

   おとうさんも。行くことに、なったんだよね。

  学校から。バスで、港まで行って。船に。乗せて、もらったんだよね。

  見学した後で。

   「きょうは。残念ながら。カレーの販売は。しておりません。」て。

   言われたんだよね。

   「なんや。きょうは。ないんか。」いうて。

   あの時。一番、残念がったのは。おとうさん、だったんだよね。

  「わしなあ。まえに。護衛艦の、イベントに、来た事あるんじゃ。」

  「友達が。おんなじような、仕事しとるけのう。」

  「いっぺん、来てくれ。言われて。」

  「その時。教えて、くれたんじゃ。」

  「その船ごとに。カレーの、味が。違うんじゃ。言うてな。」

  「そじゃけえ。なあ。」

  「この船の。自慢の味を。食うて、みたいと。思うとったのに。」

  「残念じゃのう。」

  「ほんまに、うまいんじゃ。」

  「お前らにも。あのカレー、食わした、かったのにのう。」ってね。

   友達の話や、カレーの話を。してくれたん、だよね。

  結局、その日は。ラーメンと、いうことに。なったんだけど。

  どうしても。息子達に、思い出の、カレーが。食べさせたくて。

   後日。作って、くれたんだよね。おとうさんが、カレーをね。

  あの時。食べた、カレーが。

   本当に。おとうさんが、食べた。思い出の、味だったか。どうか。

   実際のところ。分からないん、だけどね。

    美味しかったよねえ、おとうさん。あれは。

  出てきた、メモ帳見ていたら。

   カレーが。食べたく、なりましたよ。おとうさん。

  今夜は。カレーに。しましょうかねえ。

   さあ。どこまで。おとうさんの、味に。近づけることやら。

    頑張って、みましょうかねえ。

     ねえ。おとうさん。