文章デザイン ★「雨とランプ」
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「カフェにまつわる。」



つまるところ、僕は確かなものが欲しいのだろう。

「きっと しかたのないことなのよ。それは。」

彼女はそう言うと、コーヒーを一口含んだ。

カップを口に運ぶ手の動きが、うすく輝く線を残すように見えた。

「あるていど歳をとって、いろいろ見ないうちはね。」

彼女の低く透き通った声。店内に流れるクラシックと、じんわりと溶け合う。

白いカップからは、コーヒーの湯気がのぼっていた。

ゆっくりと。

「でも、知ってしまったら もう そこまで。」

昔のようにはいかなくなるの。

彼女はそこまで言うと、壁に架かる絵に目をやった。

面白い絵ね。

肩まで伸びた黒い髪に 白熱灯の淡い光が、かすかに煌く。

僕は静かに息をする。この世界をただ、見つめていたかった。

「そういうふうに出来てるんだわ。きっと。」

長い睫毛が、少しうつむく。白い頬に影ができる。

彼女は最後の一口を飲むと、カバンを取って席を立った。

白い服が、暖かなオレンジ色の店内で 柔らかく動く。

じゃあ、ごちそうさま。

僕は彼女がいなくなると、カップを片付け始めた。

彼女と過ごす時間は、決まって店を閉めた後だった。

気が付いたらカウンターごしの席に座っているのが いつものこと。

僕は彼女の作り出す世界が好きだった。

彼女に自分から話しかけることは、決してしない。

ただ、話を聞くだけ。それで十分だった。

彼女は常に、いつのまにか居て いつのまにか消えていた。

あの人は、何年こうして過ごしているのだろう。

もしかしたら何十年かも知れないのだけど。

明日もまた、この時間に彼女が訪れることを期待して

僕はオーディオを止めた。

エプロンをはずし、店内の照明を落とす。

ひどく老いてしまった僕だけど、彼女を愛していた。

ビート・パワー・ビート

しろいガラスのハコの中


うずまく空気


舞い上がる青


すべては透明な楽譜


キューブ状の感情は


光の速さで弾けとぶ


突風 回転


ここにいる


紫色のバタフライ


Don't stop me now.



クリーム・モニター

こげ茶色の大地


白い帯


赤い線


走るそれぞれのライン


曲がりくねって


絡み合って


そんでもって


叩きつけろ!