僅か5秒で25kmの差 | 見えない翼

見えない翼

私達は誰もが夢に向って翔る“見えない翼”を持っています。しかし、多くの人々が夢を追う事を諦め、翔る事をいつしか忘れて・・・。
そんな世の中にあって、パラグライダーの世界一へ挑戦し続ける父と重度の障害を持ちながらも懸命に生きようとする息子の奮闘日記です。

<ツアー6日目> 晴れ

今日も良い天気で、風向きも良い。

まだ所々に水が溜まっている所があるが、

地面も空気も乾燥してきている。

今日もビッグフライトの期待が持てる。


前日の慣らしで40kmも飛べたので、

この青空で、ゆっくりと寝ている事ができず、

皆さん、予定の時間よりも早く準備を始めた。



そのお陰で、予定の時間よりも30分早く着いたが、

テイクオフ場は既に良い風が吹き、

充分に飛べるコンディションになっていた。


慣れてきた様で、テイクオフもスムーズに出て行く。

15分で全員が空に飛び立った。

最後に私が飛び立ったところで、スタート!!


昨日同様に、パラの編隊は、

お互いに助け合い、協力し合いながら、

上手に集団を作って、北西に移動した。


そして、昨日の40km地点に差し掛かったところで、

脱落者が出始めた。最初に降りた人から

「地上は強風で、バックする事もあるので気をつけて!」

と連絡が入った。


勿論、私もGPSのデータから想像が出来ていた。

他にも降りてしまいそうなぐらい低くなっている人に、

名前を呼んで注意を促す。


そうやって一人また一人と脱落して行き、

最後に Y.Yamada さんが残ったので、

何とか距離が伸ばせるようにフォローする。


気まずい高度になった時に、

サーマル源らしき反応を見つけ、

サーチングしている時にほんの一瞬、

5秒程 Y.Yamada さんから目を離した瞬間に、

サーマルのコアに入ったY.Yamadaが垂直上昇していった。



風下側に入ってしまった川地は、

それに入る事ができず、敢え無くランディングしてしまった。


実は、私が降りた45km付近から、

Y.Yamada さんは、たった一人でグングン距離を伸ばし、

70kmをオーバーしたのだ!!


僅か5秒で、25kmの差。

XCとは、時に冷酷なものである。



P.S.(本日のハプニング)

最初に降りた人の直ぐそばに、Sさんが低く飛んでいた。

「バックするぐらい強風ですよ!!」

「そこに安全に降ろしてくださいね!」

が、しかし、Sさんはしつこく粘って上げ直そうとして、

ドンドン流されていく!?

(2kmほど風下には、ハイウェーがある。)


Sさんは、流されないセンターリングが苦手だ。

再三降ろすように、注意したが言う事を聞かない。


みるみる流されて、とうとうハイウェーの上へ!!

ここで、ようやくセンターリングを止めた。

何を思ったのか、ハイウェーを背にして、

アクセルを踏んで、前に出そうとしている。


Sさんは、

テイクオフで風が強目の時に、よく引きずられている。

そんなSさんが無事に着地できたとしても、

その後どうなるか、想像する事は容易い。


ハイウェーの風下側の広大な敷地に降ろす様に

指示したが、完全に無視!!


そして、着地!!


その時、偶然にもハイウェーには車が走っていなかった。


案の定、テイクオフ同様に引きずられる。

何もコントロールができず、なすがまま。

ただ、引きずられる。 ズルズルと・・・。

ああっ、もうだめだ!! Y(>_<、)Y


異変に気付いたドライバーが急停車した。

追突事故も起きなかった。  (*´Д`)=з

ただ、Sさんが引きづられて横断するのを

見送ってから走り去ってくれた。


川:「勘弁してくださいよ!

   危険なものを背にして降りないように

   注意したじゃないですか!」

  「強風なっているので降りたら、

   どうなるかぐらいわかるでしょう!!」

  「避けようとして事故が起きて、

   死傷者が出たどうするつもりですか?」


S:「私がひきづられている間、

   車はみんな止まってくれていましたよ」


川:(だめだ、まったく反省していない (-""-;) )



実は、Sさん回収の時にもハプニングを起こしている。

降りた所で直ぐ近くに来ている回収車を

待っていれば良かったものを、ヒッチハイクをして、

キラニーではなく、ブリスベン方向へ行ってしまったのだ。

(因みに、Sさんは全く英語が話せません)


本人は通じていたと、言い張っていますが、

普段からオージーの人と話しているのを聞いていると、

99%日本語です。通じるわけが無い。

(もの凄い思い込みです。 (ーー;) )


お陰で、回収車は2時間以上掛けて、

遠回りをしてから、モーテルに帰り着きました。



この後、きつくお灸を据えたのは、言うまでもありません。