翔の進歩54 頼み事 | 見えない翼

見えない翼

私達は誰もが夢に向って翔る“見えない翼”を持っています。しかし、多くの人々が夢を追う事を諦め、翔る事をいつしか忘れて・・・。
そんな世の中にあって、パラグライダーの世界一へ挑戦し続ける父と重度の障害を持ちながらも懸命に生きようとする息子の奮闘日記です。

<療育施設> 雨

帰国したら、翔は元気になっていた。

そして、進歩もしていた。



ワイフの話では、

休みの日にお出かけするので、服を着せ替えていた時の事。


全ての服を着終える前に、玩具で遊ぼうとしたので、

「 ズボンがまだですよ、さあ、次はズボンの番よ! 」 と言うと、

翔が手を伸ばして、置いてあったズボンを取ったそうだ。

ワイフは、 「 まあ、ありがとう!! 上手上手 」 と誉めたそうだが、

内心では、 「 まあ、まぐれだろう!! 」 と高を括っていたそうだ。


今度は、何も言っていないのに、翔は靴を取って手渡したそうだ。

それでも、ワイフは 「 一度有る事は二度有る!? 」 と

本気にはしていなかった。


「 もう一つ靴があるでしょう!? 」 と言うと、

もう片方の補装具を取って手渡したらしい。

もはや、これはまぐれではない、ワイフは確信したそうだ。



これは、もうメガトン級の進歩である。

これまで私達と翔のコミュニケーションは、

単純な動作と意味しかなかった。


「 行こう! 」

「 ご飯を食べよう! 」

「 止めなさい!! 」

「 ビデオを見る? 」

etc.。



しかし、今回は、 「 ~してください 」 と言う “ 依頼 ” なのだ。

これまでとは、レベル,段階(フェーズ)が違う。


依頼を受けるというのは、

『 自分の欲求は何もなく、他人の願いを叶えるのだ。 』

これは、高い知識レベルに達しないと出来ない行動だ。


勿論、

2才ぐらいになれば、普通の子なら誰でも出来ることだが・・・。

翔にとっては、革命的な出来事だ。




早速、川地もやってみた。

「 ショウくん、靴下取ってください! 」

すると、手を伸ばして取ったのは、靴(補装具)だった。


間違えても構わない。(当たり前なのだから)

そんなことより、取ってくれた事が嬉しかった。

 ( ̄ー ̄)/L  (ノ◇≦。)


「 あれっ? それは靴下かなぁ~? 」

そういうと、あれ?これじゃない?間違えちゃった!?

といった顔をして、取り直してくれた。