<お仕事>
前の晩、翌日の天気の事で非常に盛り上がった。
相当良いコンディションが予想できたからだ。
そして、朝、塾生の気持ちは逸っていた。
しかし、川地は嫌な予感がしていた。
先週の中国地区の塾の時のように、接地逆転層が出来て
八郷盆地に霧がはっていたからだ。
こういう時は、サーマルが活発になる時間帯が大幅に遅くなる、
中国地区と違ったのは、午後の方が風が良くなる予報だったことだ。
今は北東風だ。山には直ぐに上がらず、
しっかりと準備をしてから上がるように指示した。
川地の予想は的中した。
もう10時は当の昔に過ぎたと言うのに、サーマルは弱過ぎて、
ソアリングが出来ない状況だった。
そこで、エリアの会員でフリーフライトしていた方が山沈をした。
川地がテイクオフ(離陸)場に到着した時に、
その方が木の上から滑落したと連絡が入った。
パイロットの間に動揺が走った。
その方はエリアでも古参のパイロットであり、
知らない人の方が少なかった。
山沈回収、木登り名人と言われていた方だったので、
まさか?という声が多かったし、お世話になった方も多かったようだ。
勿論、塾は中止し、救助の為に現場に向かった。
先に行ったはずのパイロット達が山の中で右往左往していた。
川地は、ランディング(着陸)場から山沈を目撃していたので、
場所は特定できていた。皆を引き連れて、
山沈現場に通ずる尾根を一目散にかけ降りた。
第一発見者で救助要請を出した方が、
既に人工呼吸と心臓マッサージをしていた。
山沈現場から山道までは、総勢30名の総力で迅速に搬出できた。
救急車も消防車も、ドクターヘリも来た。
そして、病院へ搬送された。
その後、エリアクローズ ( フライト禁止 ) となった。
皮肉にも、その時素晴らしい雲と南風が筑波山系に到来した。
ランディング(着陸)場で16時頃まで、講義をした。