北関東川地塾 第四回 エリアクローズ | 見えない翼

見えない翼

私達は誰もが夢に向って翔る“見えない翼”を持っています。しかし、多くの人々が夢を追う事を諦め、翔る事をいつしか忘れて・・・。
そんな世の中にあって、パラグライダーの世界一へ挑戦し続ける父と重度の障害を持ちながらも懸命に生きようとする息子の奮闘日記です。

<お仕事> 晴れ

前の晩、翌日の天気の事で非常に盛り上がった。

相当良いコンディションが予想できたからだ。

そして、朝、塾生の気持ちは逸っていた。


しかし、川地は嫌な予感がしていた。

先週の中国地区の塾の時のように、接地逆転層が出来て

八郷盆地に霧がはっていたからだ。


こういう時は、サーマルが活発になる時間帯が大幅に遅くなる、

中国地区と違ったのは、午後の方が風が良くなる予報だったことだ。

今は北東風だ。山には直ぐに上がらず、

しっかりと準備をしてから上がるように指示した。


川地の予想は的中した。

もう10時は当の昔に過ぎたと言うのに、サーマルは弱過ぎて、

ソアリングが出来ない状況だった。



そこで、エリアの会員でフリーフライトしていた方が山沈をした。

川地がテイクオフ(離陸)場に到着した時に、

その方が木の上から滑落したと連絡が入った。

パイロットの間に動揺が走った。


その方はエリアでも古参のパイロットであり、

知らない人の方が少なかった。

山沈回収、木登り名人と言われていた方だったので、

まさか?という声が多かったし、お世話になった方も多かったようだ。


勿論、塾は中止し、救助の為に現場に向かった。

先に行ったはずのパイロット達が山の中で右往左往していた。

川地は、ランディング(着陸)場から山沈を目撃していたので、

場所は特定できていた。皆を引き連れて、

山沈現場に通ずる尾根を一目散にかけ降りた。



第一発見者で救助要請を出した方が、

既に人工呼吸と心臓マッサージをしていた。

山沈現場から山道までは、総勢30名の総力で迅速に搬出できた。

救急車も消防車も、ドクターヘリも来た。

そして、病院へ搬送された。


その後、エリアクローズ ( フライト禁止 ) となった。

皮肉にも、その時素晴らしい雲と南風が筑波山系に到来した。

ランディング(着陸)場で16時頃まで、講義をした。