子供の頃、シャム猫を飼ってました。

当時のド田舎には不似合いな青い目をした、頭のいい猫でした。

彼の名前はフィリップ3世。

父の名はマケドニアの大王アレキサンダー。

そう、歴史上の英雄の父子逆転。

家庭教師はきっとアリストテレスだろう。

偉大な大王の名をもつ息子だけあって気高く、主張の強い猫でした。

じゃりんこちえの「小鉄」みたいな野良猫が仇敵。

体型のスリムな彼はいつも血だらけの大喧嘩。

青い目をした変わった猫だと野良猫仲間からも目の敵。

しかし、負けは認めず、何度も同じ相手と大喧嘩。

いつしかシャム猫とは思えないほどのデブ猫と化して喧嘩に勝てる

ボス猫となった。

彼のお気に入りは近所の飼い猫の黒猫。

すました顔して夕食時に我が家の魚を狙ってくる。

雄なら当然大喧嘩となるところだが、雌猫だから寄り添って餌を食べてる。

ある日、学校から帰ってくると、彼は妙な大声をあげて啼く。

私を呼んでる。

「仕方ないな、ついてゆけばいいのか。」

「何だ?」「つきあえないよ・・・」

振り向いて戻ろうとすると彼は私にいきなり体当たり。

「わかった。わかった。ついてゆく」

山の奥に入った古い薪小屋がみえた。

彼は一目散に小屋に入った。

追いかけて入ると

「シーっ、シーっ」って威嚇状態の黒猫。

3匹の生まれたての真っ黒な子猫。

そう、彼は子供を見せたかったのだ。

いや、狂乱状態の彼女を救いたかったのか?

お腹がすいてるだろうと、家に帰り魚肉ソーセージを持って小屋に戻り

ガツついて餌を食べる黒猫。

「うう」唸りながらがむしゃらに・・・

初めて入るこの小屋の中をガサ入れすると、何と1紋銭が18枚。

「猫に小判」ならぬ「猫に一紋銭」

こいつは縁起のいい猫。

中三の時、7年でシャム猫は逝去。

子供達は立派な大人に育ち、1匹の雌の黒猫が我が家に残った。

猫は群れをなさない。

放置してるとやがて巣立ってよそへ野良としていってしまう。

シャム猫の血統を持ちながら真っ黒猫。

彼女の名前はエカテリーナ。

ロシア最後の女帝。

やさしい猫で私の部屋で飼った。

受験勉強をしてる私といつも一緒に夜をともにした。

高校を卒業し、誰にもなつかない彼女は半野良化した。

たまに現れては餌を食べてるって祖母から連絡うけてた。

「エカテリーナ」上品な名を持つ、お金のちりばめられた小屋で生まれた

やさしい黒猫。

私が大学を出る頃は、もうすっかり母猫となっており

次々と子供を産んだ。

その末裔が、とうとういなくなったのは、私が30歳の時。

4歳と2歳の私の子供のよき遊び相手だった。

先祖達とは違い、頭は悪そうな何処か足りない、力ない黒猫。

名前すらない。

「クロ」という仮称のまま。

猫嫌いの私の家族でありましたが、この最後の末裔は家族皆から歓迎された。

もちろん、孫の帰省時のおもちゃの要素もあったが、

彼は皆の助けがないと生きてられないほど弱かった。

おそらく近親相姦が産んだ不幸な生い立ちと推測してる。

生気のない、トロンとした目は祖父にあたるシャム猫とはえらい違い。

最期は死体を見せないまま、冬の寒い日にいなくなったとか・・・

20年に及んだ我が家の猫の3代物語。



私も3代目。

死に場所は決めている。

今年、猫を飼い始めた。

またドラマをみたい。