松本清張の小説には、したたかに生きる悪女が多く登場する。BS―TBSで12月8日午後9時から放送されるドラマで演じるさと子もしかり。清張作品に描かれる女性について、「癖があるけど、どこか魅力的。犯罪に手を染めても、見入ってしまうところが必ずある」と評する。

 配偶者からの暴力(DV)に苦しんでいたさと子は、ある日、夫の要吉(西岡徳馬)を死なせてしまう。その直後、さと子はDV問題に取り組む弁護士のたき子(市原悦子)を訪ね、助けを求める。警察に逮捕されたさと子はDVの記録をブログにつづっており、さらに要吉が、さと子の知人、静代(清水美沙)と愛人関係であったことが明らかになる。さと子に世間の同情が集まる中、裁判が始まる。

 さと子がどこまで計算して夫を死なせたのかが、このミステリーの核といえる。さと子を演じながら、「ほかの登場人物と比べて、とても輪郭がぼやけていた。本当の顔はどこにあるのだろう」と悩み続けた。


夫を死なせてしまったさと子(夏川結衣)と弁護を引き受けたたき子(市原悦子)。本音をさぐり合う女性同士の心理戦も見どころ そんな時、市原から「今回は何をやってもOKよね」と言われた。計画的だったか否かは、視聴者の見方にゆだねられるように演じるのが一番いいと気付き、難役を面白いと思えるようになった。

 たびたび描かれる回想シーンにも苦労した。

 「誰のどんな状況下での回想なのかはすごく大事。回想している人にとって、さと子がどのように映っているのかを、なかなか理解できなかった。どの視点で描かれている場面なのか気にして、見てもらえれば」

 与えられた役をきちんと演じるために、できる限り仕事の掛け持ちはしない。演技を磨くための読書や映画鑑賞もするが、「撮影中は、絶対に映画は見ないし、小説も読まない」と言う。

 演技については、「考え過ぎてしまい、撮影に入った時に邪魔なものまで持ち込んでしまうこともある」としながらも、「自分が何かを吸収し、成長するために必要な考える力は持っていたい」と語る。

 精神的に楽になったのは30代半ばにさしかかった頃からという。

 「それ以前は吸収したくても、何を言われているのかさえ分からなかった。今は多少追いかけられるようになった気がする」

 「見ている人に新鮮さを感じてもらうこと」を心がけている。今回のドラマは1950年代に書かれた小説が原作。「当時は斬新だったトリックを現代版で新鮮に見せることは難しい。その分、登場人物たちが生き生きとしないと。そこに挑むのが楽しい」と力を込めた