●マタイ福音書41年説の根拠?

 

WTがマタイ書の成立を41年、ヘブライ語で書かれた、とする根拠は限りなく薄い。

おそらく、130-40年ごろのパピアスの記述を根拠としているものと思われる。洞察にはそう書いてある。

これもエウセビウスが「教会史」に引用したものである。パピアスの著作によると、マルコについてはかなりページを割いて長い論議を記述している。

しかし、マタイについては、ほんの一言「マタイはヘブライ語でイエスの言葉を編集した。それをそれぞれが自分にできる仕方で解釈している」という謎の言葉を、マルコに関する長い註の後に残しているだけである。

「自分にできる仕方で解釈している」とは何を意味するのか明確ではないが、「圧倒的な」ものとはとても言えず、困ったことに、「マタイがヘブライ語で書いたものを後でギリシャ語に翻訳した」というようなことを臆面もなく言ってのける輩がいるという批判的な書き方でしかない。「霊感」が述べるような、「圧倒的なもの」などとはとても言えない。

「圧倒的なもの」があるなら、具体的な資料名を挙げて、証明してもらいたいものだ。(笑)

 

 

WTが41年ヘブライ語説を採用したのは、おそらくQ資料の中の最も古い伝承資料の中に、西暦41年ごろ、ヘブライ語で書かれたものが存在することに起因しているものと思われる。

 

もしそうであるなら、たとえば、50年前の英語の書籍を参考資料にしながら、日本語で独自の本を出版したとする。その本は、英語の本を参考資料にしたのだから、日本語の本ではなく英語の本だ、発行した日も日本語で出版した日ではなく、参考資料が出版された50年前にすべきだという人がいたら、どう思うだろうか?(笑)

 

まともな論議とみなす人はいないだろう。

 

その後、1000年以上、写本が繰り返された後の、いくつかの写本の奥付けを根拠に、それまでなかった41年ヘブライ語説を採用するとは、信じがたい暴挙である。

霊感神授説信仰、WT組織崇拝はかくも正常な思考能力を奪う。