プロローグ ─── 古来、国というのは武力の上に成り立ってきました。日本列島には豪族によるたくさんの王国(村)がありましたが、渡来人(当時の中国からの避難民)との争いの中で、うっすらとした日本のようなもの(大和王朝)がつくられました。

 

やがて、侍集団が鎌倉に自治政府(幕府)を打ち立て、日本を代表して元(モンゴル)の侵略を阻止。これが後に江戸幕府に発展します。しかし、薩長土肥がイギリスから資金と武器を借りてクーデターを起こし、明治政府を樹立しました。現在までこの体制が続いています。

 

国にとって重要なのは、一に政治、二に経済、三に軍事です。どれが欠けても国を維持できません。政治が狂うと、歴史の教科書のように史実までねじ曲げられてしまいます。

 

誰しも「戦争がなくなって欲しい」と願います。僕もそうです。しかしそれは、人類史上なかったことであり、実現するのは容易ではありません。

 

 

防衛論議の本当の狙い

日本の防衛というと、昔から「専守防衛」が議論され、最近では「敵基地攻撃能力」が話題になっています。例えばこんな具合です。

 

敵基地攻撃能力 真の抑止力にならない

東京新聞Webコラム 2020年8月5日 07時19分

 

「敵基地攻撃能力の保有」を事実上求める自民党の提言は、「専守防衛」の憲法九条を逸脱するのでは、との疑問が拭えない。地域の軍拡競争が加速すれば、真の抑止力にもならないのではないか。

 

 提言の発端は、安倍内閣が進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」(地上イージス)の配備計画の撤回だ。それによって生じるミサイル防衛の「空白」をどう埋めるのか、自民党が検討してまとめた提言を、安倍晋三首相、菅義偉官房長官ら政府側にきのう申し入れた。

 

 提言は日本を標的とする弾道ミサイルについて「迎撃だけでは、防御しきれない恐れがある」と指摘した上で「相手領域内でも弾道ミサイルを阻止する能力の保有」が必要だとして、政府として早急に結論を出すよう求めている。

 

 提言には「敵基地攻撃能力の保有」という文言はないが、相手領域内での阻止能力には言及しており、敵基地攻撃能力の保有を事実上促したものといえる。

 

 歴代内閣は、ミサイル発射基地への攻撃は「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」と、憲法九条が認める自衛の範囲内としてきた。

 

 同時に政府見解は「平生から他国を攻撃する、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持つことは憲法の趣旨ではない」ともしており、敵基地攻撃が可能な装備を持つことを認めてきたわけではない。

 

 それが一転、攻撃能力を保有することになれば、専守防衛を逸脱しかねない。抑止力向上のための取り組みが周辺国の軍拡競争を促し、逆に緊張を高める「安全保障のジレンマ」に陥る恐れもある。

 

 政府は国家安全保障会議で新しい安全保障戦略を検討、九月にも新しい方向性を示すというが、自民党提言をそのまま受け入れず、慎重に議論する必要がある。

 

 日本世論調査会の全国郵送世論調査では、自衛隊は「専守防衛を厳守するべきだ」と答えた人は76%に上る。国民多数の思いを、政府が踏みにじってはならない。

 

 安倍首相の政権復帰後、防衛費は増額が続き、過去最高を更新し続けている。新しい安保戦略に、防衛費を増額、維持する意図があるとしたら看過できない。

 

 首相は提言を受けて「国の使命は国民の命と平和な暮らしを守り抜くことだ」と述べた。ならば、最優先で取り組むべきは、コロナ禍に苦しむ国民の暮らしや仕事、学びを守ることであり、限られた予算を振り向けることである。

 

たまたま検索の上位にあったのでご紹介しました。東京新聞さんについて他意はありませんが、すみません、いろいろ批判しております。

 

議論が進まない主な原因は、日本国憲法の矛盾にあります(ホントは矛盾どころか問題だらけなんですけどね)。

 

第9条 日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し,国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため,陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない。国の交戦権は,これを認めない。

 

第13条 すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。

 

戦争しちゃダメ、でも、国民の生命を尊重しなさいというのが「目標」です。条文だけだと机上の空論になるので、実態に即して考えてみましょう。

 

 

 

 

イラクの実例

僕は、映像資料が豊富なので、湾岸戦争とイラク戦争をよく参考にしてます。どちらもアメリカ対イラクですが、政治的背景、戦略、戦力が異なり、アメリカ側だけでなくイラク側から見てみると、戦争全体の戦略について、局所的な戦術についても勉強になります。

 

イラク対アメリカ、ちょうど日本対中国みたいな戦力差です。結果は二回ともイラクの完敗。現代戦は制空権を奪った方の圧勝。3,000両以上ものイラクの戦車になす術はなく、大部隊も一晩で全滅しました。アメリカの戦闘機は1機か2機が撃墜されただけです。

 

イラクが戦車でなくミサイルを配備していれば、イランのようにミサイルを自国生産できていれば、アメリカは戦争を躊躇したかもしれません。これが抑止力です。敵に「脅威を与える」ことで戦争を回避できる場合が多いのです。

 

「敵基地攻撃能力」って抑止力のことなんでしょうか。よく分かりません。ところで、政府っていつから抑止力を否定するようになったの? また一方の真の抑止力の真て?・・・根拠がないものを「空論」といいますよね。

 

 

専守防衛は防衛ではない

防衛とは、防空識別圏、EEZ(経済的排他水域)の中に敵を入れないこと。ほかに国民と国土を守る術はありません。イラクに致命的だったのは、防衛力の欠如です。

 

上陸されたら戦う・・・何も防いでないし衛(まも)ってないですね。 それはすでに「侵略されてますた、さぁ、勝手に戦え」です。


「迎撃だけでは、防御しきれない恐れがある」・・・恐れはありません。自衛隊のミサイル迎撃目標は50%ですから、少なくとも50%のミサイルが着弾します。そして、敵のミサイル1発とミサイル迎撃部隊、それぞれのコストは? 採算も合いませんね。


中国は兵士に覚醒剤を投与すると言ってますから、腕がちぎれたって向かってきますよ。どうやって止めます?

 

どちらも答えは同じ、「敵の出鼻をくじく」です。ミサイルが発射準備に入る、揚陸艦がEEZに侵入する段階で阻止するってこと。これは大昔からあるセオリーの一つ。

 

抑止力だけでなく、防衛力まで捨てたら・・・「座して自滅を待つべし」。

 

政治で解決できず、経済でも解決できなかったから、軍事なんですよね? 平和憲法があっても、宣戦布告されてもしなくても、もめたら最後は戦争。残念ながら、歴史はこの繰り返しです。

 

そして戦争とは、どれだけ壊すか、どれだけ殺すかではなく敵の戦意を奪うのが勝利です。その点から見ても、「敵の出鼻をくじく」は理に適ってません?

 

 

防衛論議の嘘

記事の結論は次の通りです。

 

最優先で取り組むべきは、コロナ禍に苦しむ国民の暮らしや仕事、学びを守ることであり、限られた予算を振り向けることである。

 

戦時下や占領下で、まともな暮らしなんてできませんよ。75年前の日本を想像したら分かるでしょう。戦争がないからこそ、安心して生活できるのです。

 

・・・抑止力向上のための取り組みが周辺国の軍拡競争を促し、逆に緊張を高める・・・

 

嘘はいけない。国力に見合った軍事力しか持てないでしょ。無理な軍拡をすれば、経済が破綻して戦争どころではなくなります。それに、抑止力のある武器と抑止力のない武器がありますよね。同じ軍事費でも、何に使うかで抑止力が変わりませんか?

 

韓国と同じ、日本も米軍基地負担割合が増えた分だけ防衛費が増えてます。F-35はF-4のリプレイス。本当に軍拡してますか?「戦争は心の病」の通り。緊張が高まるのは、どちらか一方の国が強欲に支配されたとき。経済援助の方が問題です。

 

なんとなく感じません? 政治家さんもブンヤさんもナイス・チームプレー。抑止力をなくせ、防衛力をなくせです。抑止力のない武器とは、敵が戦力と見なしてない武器を指します。したがって、防衛にも役立ちません。

 

例えば、離島防衛では、「獲らせて獲る」という議論があります。でも、島を獲られた時点で敵の実効支配がはじまりますよね。離島奪還は、敵からみたら防衛ではなく侵略では? 真の狙いは、プ・レ・ゼ・ン・ト。政府のアリバイ作りみたいなものでしょ。

 

 

 

エピローグ ─── ディープステートの中でもっとも警戒が必要なのはイギリス、というよりロンドン政府かな。明治維新、中東戦争、パキスタン独立、イスラム国、BlackLivesMatter・・・これまで何度かご紹介してきた通り、ロンドン政府が関わった国では必ず内戦が起こっています。

 

日本政府も・・・だから、アメリカとロシアが日本を警戒しています。