福島第1原発の事故によって、各地で計測されている放射線量は減少傾向が顕著になってきている。ただ、放射性物質の広がり方は複雑だ。政府が出した、原発から20キロ圏内の「避難指示」、20~30キロ圏内の「屋内退避指示・自主避難促進」といった線引きのように、同心円状に均一に拡散しているわけではない。

 文科省や各自治体の調査によると、第1原発の2、3、4号機が爆発した14、15日を境に、各地の放射線測定値は急上昇。福島市では1時間あたり24・24マイクロシーベルトを記録した。これは平常時(0・04マイクロシーベルト)の606倍に相当する。影響は原発から約200キロ離れた東京都にもおよび、新宿区でも、最大となる0・81マイクロシーベルトを記録した。


 しかし、その後はおおむね減少。25日時点で、福島市は4・04マイクロシーベルト、新宿区は0・13マイクロシーベルトと、健康には直ちに影響の出ない値にまで落ち着いている。

 自衛隊、消防などの放水活動が奏功していることや、放射性物質が風で広範囲に拡散し、濃度が薄まっていることが考えられる。

 また、放射性ヨウ素は約8日で放射能を出す能力が半減する「半減期」を迎える。15日頃に大量に放出された放射性ヨウ素はすでに半減期が過ぎており、これも各地の放射線値が下がる要因とみられる。

 文部科学省の担当者も「大量の放射性物質が放出される事象がなければ、今後も数値は落ち着いていくのではないか」と話す。

 一方で、気になるのは原発から北西に約61キロ離れた福島市などで確認されている高い数値だ。直ちに健康被害が及ぶ値ではないが、政府が屋内退避を指示し、原発の北方約24キロにある福島県南相馬市の観測地点と比べても高い値で推移している。


 原因の一つとして考えられるのは風向きだ。放射性物質は風で運ばれる。風向きによって、退避区域を超えた場所でも高い数値が出る可能性がある。

 23日に原子力安全委員会が公表した、放射能影響予測システム「SPEEDI(スピーディ)」によるシミレーションでも、一定条件下では30キロ圏外で被曝(ひばく)量が安定ヨウ素剤の予防投与基準である100ミリシーベルトを超える可能性が指摘された。わずかだが、アイスランドや米カリフォルニア州にまで放射性物質が届いたという報告もある。


 だが、福島地方気象台によると、15日以降に福島市や原発周辺で確認されている風はおおむね北西の風。風はむしろ市内から原発に向かって吹いていたのだ。福島県の担当者も「上空では風向きが違うのかも。専門家に聞いても分からないと言っている」と、正確な原因をつかみかねている。



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