みんな夢中:剣詩舞道師範・美濃部浩一郎さん /三重
◇静と動、迫力の舞台--美濃部浩一郎さん(50)
日本刀など武具や舞い扇を手に、漢詩や和歌の吟詠に合わせて舞う「剣詩舞(けんしぶ)道」。その華麗な舞台芸術の世界に魅了され、「晄明流治晄舘」師範として打ち込む美濃部浩一郎さん(50)=鈴鹿市、雅号・美濃部晄匠=は「日本ならではの伝統芸能を多くの人たちに広めたい」と、指導に励んでいる。【井上章】
美濃部さんによると、剣詩舞は江戸末期から明治初期にかけ、武士の時代を象徴する剣術を基礎に、美しく表現する舞台芸術として編み出されたという。舞踊としてだけでなく、武士道の精神や侍の心情を受け継ぐ芸として、多くの流派に受け継がれている。当初は剣や槍(やり)の武具を使う「剣舞(けんぶ)」として広まり、女性愛好者のために舞い扇を用いる「詩舞」が生まれた。さらに、剣舞や詩舞を数人で舞う「群舞」も誕生し、舞台芸としての幅が広まった。毎年、県大会から地区大会、全国大会へと勝ち進む「全国剣詩舞コンクール」が開かれている。
美濃部さんは20代半ば、公民館の講座の中に「剣舞」を見つけた。時代劇やチャンバラが好きだったことから、「殺陣ができる」と安易な気持ちで参加したが、想像とかけ離れた芸術の世界に面食らった。しかし、「珍しく若者が入って来た」と歓迎されたうえ、舞台を踏むと人前で踊る快さのとりこになったという。
着物に、はかまのいでたちで舞う。優雅な身のこなしを見せるかと思えば、「えいっ」の掛け声もろとも舞台をドンと踏み込み、気迫に満ちた形相で剣を切り込み、さっそうと型を決める。静と動のメリハリある舞いは迫力にあふれ、ピーンと張りつめた独特の雰囲気が舞台を包む。
「最も重んじるのは礼節と気品」というのが、剣詩舞道を手掛け四半世紀のベテランの信念だ。2分足らずの吟詠の間に人の一生を表現する雄大な演目もあり、「漢詩や和歌の内容を十分理解しない限り、感動を呼ぶ演技はできない」と、その難しさを語る。
そのうえで「まるで数分間の“大河ドラマ”のようで、奥が深いからこそ醍醐味(だいごみ)がある。思い通りに演じられた時の達成感に勝るものはない」と魅力について話し、多くの人の入門を呼び掛けている。
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◇メモ
美濃部さんは01年に剣舞、03年には詩舞で全国コンクール優勝。晄明流の愛好者は三重、岐阜両県に約150人いる。3歳から入門可能。問い合わせは宗家・上岡晄壮さん(059・333・8840)。
〔三重版〕
2月6日朝刊
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