Re;再会 《後編》 12 | 向日葵の宝箱

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まじっく快斗・名探偵コナンの小説を中心に公開しています。
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ヘリを飛び立った後、ハンググライダーで飛ぶ快斗の両手に掴まリ、サーカスの空中ブランコの様に釣り下がる状態で、スザクは目的地である国際会議が行われているホテルへと降下を続けていた。
そしていよいよ、その目的地直前というところでスザクは声を上げた。

「快斗、屋上には数十人以上警備の警官隊がいるよ。」
その声に快斗が口許を上げる。
「だろうな。さすがにテロリスト対策に拳銃も携帯してるだろうし。」
「そうだね。」
応えたスザクは少し考え込む様な表情をしてから数瞬後、顔を上げた。

「快斗、この屋上全体、出来れば警官隊が密集しているところを中心に何か目くらましが出来るかな。」
「ああ、もちろん出来るけど・・・。」
「そう?それじゃ、よろしくね。」
何をするんだ・・・と。
快斗がそう問い返す間もなく、快斗の手を離すと、スザクは単独で30メートル以上の高さ。
ビルの高さで換算すると10階分くらいにあたるだろうか。
そんな高所から、体操選手の様に綺麗にくるくると体を回転させると、数秒後屋上に難なく着地していた。
警官隊が着地したスザクそ驚愕の表情で見つめながらも、周りを瞬時に声を上げて取り囲む。

「なるほど、そういう事か。」
快斗は呟くと、より高度を落とし屋上を旋回しながら次々と煙幕弾を落としていった。

その煙幕により、あっという間に屋上が濃い煙に包まれたかと思うと、その煙の中で軽く響く打撃音が快斗の耳に聞こえてきた。
また、ゲホッ、ゴホッ・・・と小さな唸り声も聞こえてきて。
快斗はそれを聞きながらスザクの援護に入ろうとしたが、うっすらとスモークが晴れてきた時点で、既にその中に立っていたのは中央に立つスザク一人だけだった。

「さすが。」
快斗はそう言いながらストンとスザクの横に着地して、背中の翼を閉じる。

「大した事ないよ。拳銃を取り出していた人達もいたけど撃つのをためらっていたし。射線上の軌道を読めば威嚇だって事がわかるからね。だからといって僕達の姿を見られるわけにもいかないから。悪いけど彼らには少し眠ってもらう事にしたんだ。」
「なるほどね。」
快斗は応えると、倒れている警官隊の一人に近づいて腰を下ろした。

確かにみね打ち程度のものなのだろう。
うまく急所を外しつつツボを押さえて攻撃しているようで、倒れている警官にまったく外傷はなかった。
軽く気を失っているだけなので、しばらくすればすぐに動き出す事が出来るだろう。
まわりで倒れている警官隊も皆同じ様子だ。
そう判断した快斗は息を吐いて立ち上がった。

「これじゃオレ達がテロリスト・・・みたいだけど。悪いな、制服、ちょっと借りてくぜ。」
快斗はそう言うと、目の前の警官の制服を脱がせた制服をとスザクに差し出した。

「スザク、これに着替えて中に潜り込もう。」
「わかった。」
応えたスザクが快斗から制服を受け取る。

「そんじゃオレも。」
言いかけたその時、少し離れた場所にいる警官が無線機に手を伸ばしているのが快斗の視界に入った。

快斗はトランプ銃を取り出し、射出したカードで無線機を弾(はじ)き飛ばす。
快斗はすぐに動き出すとその警官に駆け寄った。
顔を上げた警官が目の前に立った快斗を青ざめた表情で見上げる。
「怪盗・・・キッ・・。」
そう警官が言い終わる前に快斗は催眠スプレーを嗅がせて再び眠らせると、オンになっていた無線機の電源をすぐさまオフにして息を吐いた。
その場で片膝をつきながら無線機を手に取ると、わずかに苦笑を浮かべる

「これは・・・警部のところにさっそく『キッド発見』の連絡がいっちまったかな?」
無線機を懐に入れると快斗は苦笑した。
「帰ったら警部の説教タイムだな。」
そう言って、もう一度今度は大きな溜息を吐き出す。

「とりあえず・・・。」
気を取り直してそう言うと、倒れている警官が身に着けている制服をサッと外して着替えを始めた。
そして、数秒で着替えを終えた快斗が立ち上がり後ろを振り返る。

「スザク、終わったか?」
「うん、大丈夫。すぐに行けるよ。」
制服を身に纏い、帽子をかぶるとスザクは微笑を浮かべながら応えた。

「了解。それじゃ・・・。」
快斗はそう言いながら歩き出す。

「ここの人達にはちょっと休んでてもらうとして。潜入開始だぜ。」
快斗の言葉にスザクも頷くと、二人は並んでその場から歩き始めた。