「黒羽、ここで操縦を替わろう。」
「ああ。」
頷いた快斗は再びオートパイロットに切り替えるとその場で立ち上がった。
そして隣に立っていたルルーシュが操縦席に座り操縦桿を握ると前を見据える。

快斗はルルーシュに席を替わった後、後方へ移ると、立ち止まり肩のあたりを掴んだ。
それを勢いよく下に引き下ろし、一瞬で早変わりを終える。
そうして、純白の衣装を纏う怪盗キッドの姿になった後、モノクルに手を掛けて窓の外に視線を向けた。
その様子を横目で見てルルーシュは言った。

「黒羽。そこからスザクを連れて降下出来るか?」
「ああ、もちろん。」
応えた快斗はスザクと顔を見合わせ頷き合う。

「ルルーシュ、今の段階で僕達に何が出来る?」
たずねたスザクにルルーシュが応える。

「現状では、この場所で何か起きる可能性が高い・・・としか言えん、非常に不確かな状況だ。実際俺達の世界の様にテロリストが現れるのか?それとも何かしら外部からの破壊的行為が行われるのか。そもそも、ここでその『何か』は本当に起きるのか?可能性として考えられる事はいくつかあるが、判断するにはあまりにも情報が少なすぎる。」
ルルーシュのその言葉に快斗が頷く。
「つまり、それを判断する為の材料を集める為にあの場所に潜入し情報収集をする・・・というのがオレ達の役目ってわけだな。」
そう言って口許を上げる快斗をコナンが見上げる。
「国際会議が行われている会場内への潜入となると恐らく厳重な警備態勢がしかれていると思う。だから、気をつけろよ。」
微かに目許を細めるコナンに快斗が頷く。
「ああ、わかってる。」
その顔を見上げてコナンは言った。

「なあ、今のお前はどっちだ?」
その問いに快斗が小首を傾げる。
「どっち?」
「ああ。」
頷くとコナンが真剣な表情で快斗を見つめる。

「黒羽快斗か?それともキッドか?」
その問いに快斗は数瞬大きく目を開くと、フッと息を吐いて片膝をついた。
そして、右手を膝の上にのせてコナンに視線を合わせる。

「オレはオレだよ。それはいつだって変わらない。」
快斗は応えると、コナンの頭を掌で軽く撫でて立ち上がった。

「心配してくれてありがとな、名探偵。」
「快斗・・・。」
呼びかけたコナンに快斗は口許を上げると、ヘリの扉をスライドさせた。
開いた扉から一気に中に少し強めの風が吹き込んでくる。

「スザク。」
呼びかけると快斗はスザクに手を伸ばした。
「うん。」
応えたスザクが快斗の掌を握る。

「それじゃ、行ってくる。」
そう言って背中の翼を開いた快斗にコナンは頷く。
「必ず戻ってこいよ。」
「わかってる。」
応えた快斗が飛び立とうとする直前。

「スザク兄ちゃん。」
コナンは呼びかけると、ポケットの中に手を入れて、そこから取り出したものをスザクの目の前に差し出した。
「これ、通信機。」
「へぇ~。」
声を上げてその通信機、探偵バッジを目の前にかざすスザクにコナンは続ける。
「これがあればあそこで快斗兄ちゃんと離れても連絡を取り合う事も出来るし、発信機がついてるからこっちでスザク兄ちゃんの居場所を把握する事も出来る。」
「そうなんだ。凄いね。ありがとう。」
スザクはそう言ってコナンに笑顔で応えた。

「黒羽、スザク。」
そのやり取りを見守っていたルルーシュが運転席から呼びかけた。
「リスクの高い危険な仕事をお前達に負わせてしまってすまない。だが、お前ら二人の力が頼りだ。
その言葉に快斗とスザクは目を瞠って数瞬顔を見合わせると、二人で笑みを浮かべる。

「すげぇらしくない事言われると調子狂うからやめとけって。」
「本当に、その通りだよ。ねっ、快斗。」
そう言ってまたクスクス笑い合う二人にルルーシュはフッと息を吐いて口許を上げた。

「とりあえず、よろしく頼む。」
そう告げたルルーシュに快斗とスザクが頷く。
「了解。」
「それじゃ、行ってくるよ。」
そう応えた直後、快斗は床を蹴って中空に身を投げると、くるりと旋回してからサミット会場となっているホテルに向かいスザクの腕を両手で掴んだまま降下を始めた。

コナンは再び閉じたヘリの扉の窓から、そうして遠くに遠ざかり小さくなっていく快斗達をじっと見つめていた。