果てしなき迷宮(ダンジョン)28 | 向日葵の宝箱

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まじっく快斗・名探偵コナンの小説を中心に公開しています。
快青大好きですが腐ではないコナンと快斗の組み合わせも大好きです!
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翌日の夜、コナンは蘭には阿笠博士の家に泊まりに行くといって、工藤邸。
つまり、自宅に戻っていた。

夕食後、リビングで有希子が用意してくれた紅茶の入ったティーカップを持ち上げた、その時。
コナンの携帯の着信音が鳴った。

すぐに画面をスライドさせて電話を受けたコナンは、何度か相槌を打ちながら、最後にはフッと息を吐いて苦笑した。
「わかった。まあ、想定内の結果だよ。了解。じゃあ、また、連絡する。」
そう通話を終えたコナンの顔を、有希子が銀製の丸いトレーを胸に抱えたまま覗き込んだ。

「もしかして、今の電話って黒羽君?」
「ああ。」
その問いにコナンは応えると、手許に置かれたティーカップの中の琥珀色の液体の中に映る自分を見つめて言った。

「警部も寺井さんも彼女も。誰もあいつのそばを離れる事はしない・・・って。そう宣言されたんだと。」
「まぁ。愛されてるのね、黒羽君。」
「そうだな。」
応えたコナンは微笑を浮かべ、ティーカップを持ち上げると、笑いながら目を細める。

「元々みんな、あいつがキッドだって事を承知の上でそばにいる人達だから。ある程度何があっても・・・って。その覚悟が半端ねぇんだよ。」
「なるほど。」
黙って話を聞いていた優作が微笑して頷く。

「警部殿にもすべて今回のいきさつは説明済み・・・という認識で間違いないね。」
「ああ。」
応えると、コナンはわずかに声のトーンを落とした。

「今回の結果は、俺の不注意、甘さであいつを完全に巻き込んだ。そう説明してあるよ。警部部はあいつの父親代わりみたいなもんだから、申し訳ない・・・って。そう詫びも入れたし。」
「そうだね。まあ、人間誰しも完璧というわけではないから、致し方ない事ではあるが・・・。こうなると、いっその事、警部殿達にも我々に全面協力を願う方向で話を進めていった方がいいかもしれないね。」
「ああ。それで・・・一日でも早く、この戦いを終結させる。それが蘭にとっても、あいつにとっても。最もベストな方法だ。」
その話を聞いていた有希子が、再び心配そうな顔でコナンの顔を覗き込む。

「そういえば、新ちゃん。あの後蘭ちゃんに連絡はしたの?」
その問いかけにコナンは目を丸くした。
コナンとしては、ずっと蘭と行動を共にしていた為、新一から蘭への連絡というのはすっかり頭から抜け落ちて忘れていたのだった。

「もう、新ちゃんたら。」
有希子はそう言うと、コナンに視線を合わせていった。

「今まではたった一本の電話だけでも蘭ちゃんは新ちゃんに繋がるものがあったそれで、新ちゃんがそばにいなくても安心できたの。それがなくなった今、蘭ちゃんがどれだけ不安な気持ちを考えているか。ちゃんと考えてあげなきゃだめよ。」
珍しくまじめな顔をして人差し指を立てながら話をする有希子にコナンは深く息を吐き応えた。

「わぁ~ったよ。それじゃ、ちょっと電話してくる。」
「いってらっしゃい♪」
そう楽し気に手を振る母親にコナンは苦笑して、リビングの扉を閉めた。