「それじゃ、今のところ父さんと母さんの周辺では特に目立った異変は起こってないっていう事だな。」
「ああ、そういう事だね。」
応えた優作にコナンは頷く。
その時。
ポンッ・・・と。
コナンのスマートフォンの通知音が鳴った。
コナンはすぐに懐からスマートフォンを取り出しメッセージを確認すると、軽く息を吐いた。
「たくっ・・・。それはもう既に対策済みだっての。」
呟いたコナンに有希子が首を傾げる。
「どうしたの?誰から?」
「あいつだよ。母さんがさっき騒いでた・・・。」
「黒羽くんね♪」
語尾を上げて目を輝かせた有希子にコナンは苦笑いを浮かべる。
「それで、彼はなんと?」
「ああ、SNSにオレの京都の修学旅行での写真が出回ってるって。なんかどっかのサイトのURLが貼り付けてあったけど。それはもう対応済みだって返しといた。」
溜息まじりに応えたコナンに優作が険しい顔をする。
「新一、そのサイトの内容はきちんと確認したかい?」
「いや。でも、確認するまでもないだろ?だってあの件は父さんのおかげですっかり落ち着いてるし。あいつもその事を知ってるはずなんだけど・・・。」
言いかけたコナンはわずかに小首を傾げた。
「だったらなおさら確認しておいた方がいい。事のいきさつを知っている彼が、わざわざ連絡してきたんだ。また新たな問題が発生しているという可能性は十二分に考えられる。」
その言葉にコナンは数瞬口許に手をあてて考え込むと息を吐いて頷く。
「わぁ~ったよ。とりあえず一応確認・・・。」
言いかけたところで、今度は新一の携帯が鳴った。
「新ちゃん人気者ね。」
「そんなんじゃねぇよ。」
コナンはそう言うと、着信相手が蘭である事を確認してすぐに留守電に切り替えた。
有希子の前で蘭の電話を受けたら、後で何を言われるかわからない。
そう思ったからだ。
留守電を登録し終えたのだろう、蘭の電話が切れた後、コナンはすぐにそのメッセージを確認しようとした。
また、その時、コナンの電話の着信音が鳴った。
深い溜息を吐いてコナンは着信相手を確認すると、今度は画面をスライドさせて携帯を耳許にあてた。
「おじさん、どうしたの?」
『ああ、蘭にビールの買い置きが無いから買ってきてもらおうと思ったら電話が繋がらなくてよ。お前今、蘭と一緒にいるんじゃないのか?』
たずねた小五郎にコナンは頭を振る。
「ううん、僕は阿笠博士の家にいるよ。っていうか、おじさん。」今の法律では、20歳未満の子どもに酒類の販売はしていないんだよ?」
『なんだと~?んな固い事言うなよ。』
(おいおい・・・。)
心の中で苦笑いを浮かべつつ、コナンは再び口を開いた。
「蘭姉ちゃん、まだ帰ってないの?もう暗くなってるのに。」
『ああ。まあ部活で遅くなってるんだろ?』
「うん・・・。とりあえず心配だから僕も蘭姉ちゃんに電話かけてみるよ。」
『ああ、あと帰りに俺の酒も・・・。』
言いかけた小五郎の声を最後まで聞かず、コナンは終話ボタンを押した。
「蘭ちゃんまだ帰ってないの?」
「ああ、そうみたいだな。」
コナンは応えると改めて新一の携帯に残された蘭の留守電を確認する。
『新一?私だけど。どうしても話したい事があるの。待ってるから。必ず電話ちょうだい。本当に、待ってるからね。』
若干切羽つまっている様にも感じられるその声の響きにコナンは眉をひそめた。
コナンは留守電を聞き終えた後、すぐに蘭に電話を掛け直した。
だが、電話は繋がらず、代わりに通信会社のアナウンスが流れる。
『この電話は電源が入っていないか電波が届かないところにある為、繋がりません。』
「さっき掛かってきたばかりの電話が電源が入っていない・・・って。んなわけねぇだろ?」
コナンはそう言うと、立ち上がりその場から小走りで走り出す。
「ちょっと蘭を探してくる。」
「あっ、新ちゃん、黒羽君・・・。」
言い掛けた有希子の声はコナンの耳に届かないまま、リビングの扉がバタンと音を立てて閉じた。
後に残された有希子と優作は神妙な顔で顔をみあわせていた。