それからほどなくして、コナンは快斗からのメッセージを受け取った。
そこに書かれていたのは、平次の携帯の電波が最後に確認されたのは、大阪の通天閣周辺にある基地局であるという事。
また、通天閣周辺については、快斗が以前、インペリアルエッグを盗む為予告状を出した際に、警察が保管場所を移動させる事を見越して、周辺の地理についてすべて調べ上げていた事から、通天閣周辺に関して調べ上げたデータを持っていた。
その中で、廃ビルなど服部が監禁されていそうな場所をある程度特定したデータも一緒にコナンは受け取る事になった。

「あいつ・・・。」
それを見たコナンはわずかに目を細め微笑する。

その時の事はコナンも良く覚えている。

キッドが『世紀末の魔術師』を名乗り出した予告状。
コナンはキッドの予告状を見破り、インペリアルエッグを手にしたキッドを服部と共に追いかけた。
だが、その追跡途中にハンググライダーで大阪湾方面へと向かっていたキッドは、右目に掛けていたモノクルをスナイパーに撃たれ、負傷したハトを残しキッド本人は忽然と姿を消してしまう。
一晩中警察が捜索にあたったが、キッドは見つからなかった。
キッドは死んだかもしれない。
そうも噂されていた。

「あの時のか・・・。」
コナンはそう言いながら立ち止まり空を見上げた。

今、コナンの目の前にあるのは通天閣。
あの時キッドが、変電所を爆破させ停電した街を見渡す為に立っていただろう場所だ。
(にしても、変電所の爆破はやり過ぎだろ・・・。)
コナンはそう少しだけ苦笑いを零した。
しかもその後打ち上げられた盛大な花火。

停電した街の中で打ち上げられた花火は、大いに蘭や和葉。
それに、大阪の市民や観光客を喜ばせたはずだ。
その派手な手法については、いかにも根っからのエンターテイナーである快斗。
そして、怪盗キッドらしいとコナンは思う。

「そういえば・・・あいつ、あの時。右目を撃たれた状態で、どうやって一晩中警察の目を逃れていたんだ?」
コナンはその事についてはまだ快斗に聞いていなかった事を思い出して、少しだけ首を傾げた。

「まあ、とりあえず・・・。」
コナンは前を向いた。

その時の事は、今度快斗に詳しく聞いてみよう。
きっと、今なら教えてくれるだろう。
そう思いながら。

それより、今やるべき事は、一刻も早く服部と和葉を見つける事だ。
そう思い、コナンは歩き始める。

コナンはスマートフォンを片手に持ちながら、リストアップされたデータを確認し、しらみつぶしに1箇所ずつ地道に確認を重ねていった。

元々探偵はスーパーヒーローではない。
ホームズの時代から、自分の足で情報を収集して、その場所の地質、落ちていた吸い殻の種類、人の動き、周辺の環境。
そういう自力で集めた情報を自分の頭の中でまとめ上げて、最終的に結論を導き出す。
それが探偵なのだから。

そうしてコナンが確認を完了した場所についてはデータベースにチェックを入れていった。
その情報は快斗にもリアルタイムで共有されているのだと快斗は言っていた。

リストアップされている場所は50箇所以上ある。

警察に頼る事は出来ない。
だから、コナンは自分の足で1箇所ずつ回っていくしかない。
それでも、このリストアップされているデータがあるだけでかなり大きく時間のロスを減らす事が出来る。
限られた時間の中で、そのロスを減らす子事が出来るかの差は雲泥の違いといってもいいくらい大きい。

しかも、このデータは快斗がキッドとして集めたデータだ。
かなり確実性も高い。

「すっげぇ助かるぜ。」
コナンは心の中で快斗を思いながら言った。

おそらく服部はこのリストアップされた中から見つける事が出来るだろう。
だとしたら・・・。

「やるしかないよな。」
コナンはあえてそう口にすると、確認を終えた場所に再びチェックを入れて、次の目的地に向かい小走りで走り始めた。