「快斗、観覧車に行こう!!」
そう、鶴の一声・・・というか、青子の一声で決まった次の行き先は、世界初の二輪観覧車がある『東都水族館』。
数か月前にある事件の被害により、観覧車が崩落して、遊園地エリア全体が休業中になっていたけど、先日やっと復旧を終えて営業再開したばかりのその場所をオレ達は目指す事になった。
その途中で、あんみつ屋さんに寄ったり、有名なパンケーキの店に寄ったり。
とにかくこれでもかというくらい青子がスイーツの店巡りを楽しんで。
それからショッピングモールでフラッと店に立ち寄りながら、あれが可愛い、これが可愛い・・・と話に花を咲かせて。
そうして並んで歩く青子とアミちゃんはとても楽しそうだった。
そして到着した『東都水族館』。
「それじゃ観覧車に・・・。」
そう言って歩き出そうとしたオレの手首を咄嗟にアミちゃんが掴んだ。
「快斗、水族館・・・、私行った事ない。」
その言葉にオレはギクリと顔を強張らせる。
「うん、そっか。でももうほら、夜遅くなっちゃったし・・・。そっちはまた今度で・・・。」
「営業時間は9時までってなってる。時間は間に合う。」
「まあ・・・そうだけど。」
「行ってみたいわ。連れて行って。」
そう言われて額に脂汗を流しながら硬直したオレに青子が苦笑いを零した。
「アミちゃん、あのね・・・。」
そう言いながら青子はアミちゃんの耳許に顔を寄せると小声で話した。
それから数瞬後、アミちゃんが目を丸くする。
「快斗、魚が苦手なの?」
「うん、まあ・・・そういう事。だから、水族館は出来れば勘弁願いたいな・・・ってとこなんだけど。」
「知らなかった・・・。」
アミちゃんは呟くと「Hello,Underworld」というと「怪盗キッドは魚が苦手」と検索をし始めた。
それからしばらくしてアミちゃんがオレを見つめる。
「キッドが魚が苦手だっていう情報どころか、キッドに苦手なモノがあるって事も、世界中のネットワークを検索したけど見つからなかったわ。」
そう真剣な顔で話すアミちゃんにオレは苦笑する。
「うん、まあ・・・基本親父に言われたポーカーフェイスが信条だから。」
必死に隠してたし・・・と。
ボソッとつけ加えたオレにアミちゃんは大きく目を開いた。
「私、ネットに繋がれば人は誰でもなんでも知る事が出来るって思ってた。でも、違う。ネットの中だけではわからない事もあるのね。」
「うん。」
青子は応えるとアミちゃんの右手に手を伸ばした。
そして軽く指先を握る。
「青子は今アミちゃんと快斗と一緒にここにいられてすごく嬉しいって思ってる。その気持ちもネットのどこを探しても見つからない、青子達だけの宝物だよ。」
その言葉にアミちゃんは大きく目を開いた。
「そうね。」
アミちゃんはそう言うと、踵を返して観覧車のチケット売り場へ向かい青子と二人で歩き出した。
「行きましょ、快斗。」
「うん、ああ・・・アミちゃん。」
呼び掛けたオレにアミちゃんが少しだけ楽し気に微笑む。
「わかってるわ。怪盗キッドが魚が苦手・・・っていう情報も、トップシークレット。誰にも言わないわ。」
そう言うとフフフッと笑みを浮かべるアミちゃんにオレは大きく息を吐いて苦笑した。
「助かる。サンキュー、アミちゃん。それじゃ。」
オレ達はそう言うと、改めて観覧車の入口へ向かい歩き始める。
それから、三人で乗った観覧車からは、園内全体を明るく色鮮やかに照らす光のショーが繰り広げられてて。
その光景にオレ達はすっかり見入ってしまった。
その時、その瞬間をオレはこれから先、何があっても絶対忘れない・・・って。
そう思ったんだ。