「ここだ。」
そう言って快斗が和風建築の豪勢な建物の前で立ち止まると、コナンは隣に立つ快斗の顔を見上げる。
だが快斗はあえてその視線を無視して前を見据える。
不死を得るというパンドラの言い伝えと、そのパンドラをめぐる戦いに巻き込まれ父親が組織に殺された事。
そしてそのパンドラを血眼になって探しているのが組織の中心人物だという事。
あの日この場所でもたらされた事実が頭をよぎると、快斗はコナンに気づかれない様にポケットの中で丸めた掌を握り締めた。
それと同時に頭に浮かんだのは青子の顔だ。
ブルーバースデー。
青子の誕生日にその宝石を盗んだ快斗は、青子に誕生日パーティーを盛り上げると約束しておきながらも組織の襲撃を受けその約束を果たす事が出来なかった。
悔しい想いに駆られながらも青子の為に必死でプレゼントを考えて用意して、そうして電話を掛けた快斗に青子はわずかに涙声になりながらも最後には「ありがとう。」と笑顔で応えてくれた事を思い返し快斗は目を細める。
(本当は・・・。)
そう心の中で呟きかけた。
その瞬間、まるで現実に快斗を引き戻すアラームの様に胸元でスマートフォンが着信を告げた。
快斗はすぐにそれを取り出すと、素早くロックを解除して受信したメールを開く。
「暗黒の騎士。ダークナイト・・・か。」
呟いた快斗にコナンが顔を上げた。
その直後、再び表情を険しくした快斗にコナンは無言で目許を細める。
「なるほど。」
そう言いながら快斗は軽く口許を上げその場から歩き出した。
コナンは何も言わないまま頷くとそれに続いた。
「見えてきたぜ、名探偵。こうして襲ってくるでもなく、ただオレ達を歩かせてる奴らの狙いが・・・。」
前を見据えながらそう口にした快斗をコナンは見上げたが、やはりその表情は前髪で隠されていてコナンには読み取る事は出来なかった。
(だが・・・。)
コナンは心の中で呟くと、胸の前で腕を組んで口許に指先をあてる。
隣を歩く快斗の様子を黙ってじっと観察していたコナンには快斗がいう『組織の狙い』というのがわかる気がした。
(それはおそらく・・・。)
そう思いながらコナンはもう一度横目で快斗の顔を見上げる。