天保山大観覧車。
そこは海遊館などで有名な大阪の観光地、天保山ハーバービレッジの中でも特に有名な場所で、大観覧車の光のアートの美しさはもちろん、世界最大級といわれる高さから大阪の街を一望出来る眺めは随一と言われている。
特にその夜景の美しさは絶景といっても過言ではなく、もちろんデートコースとしても欠かせない場所だった。
地上から112メートルの高さから二人きりで眺める景色は必ず恋人達の距離を縮めるともっぱらの評判で。
当然外界が半年ぶりにキッドが現れるかもしれないと大騒ぎしている今この時も、観覧車のゴンドラの中では恋人達が寄り添いながら窓の外を眺め静かでロマンティックな時を楽しんでいた。
その時。
「あれ?」
思わず・・・といった感じでそう声をもらした彼女に隣に座る男は首を傾げる。
「どうした?」
「えっ・・・あれ・・・。」
呟いた彼女が窓の外を指差す。
「なんか、あの白い三角の・・・怪盗キッドのハンググライダーみたいじゃない?」
顔を上げてたずねた彼女に男は苦笑を漏らす。
「バーカ。なんでキッドがこんなところにいるんだよ。」
「だって・・・。」
「たくっ、お前は・・・。」
そう言いながら呆れた視線を向けてくる男から顔を逸らすと彼女は横目で下界を見下ろす。
だがその時にはもう、既に先ほどまで見えていた白い浮遊物はなくなっていた。
「キッドなんてもう半年以上出てきてないじゃん。それに引退したとか死んだんじゃないかとかいわれてんのに。こんなとこフラッと飛んでるなんてぜってぇありえないだろ?」
「それはそうだけど。でも確かに見えたんだもん!!」
そうムキになり頬を膨らませて反論した彼女に男はわずかに嘲笑の入り混じった笑みを浮かべた。
「見間違いだよ。決まってんじゃん。」
男はそう言うと、わずかにふてくされた様な顔で目を細くすると彼女に顔を近づけて言った。
「それともお前は俺よりキッドの方がいいのかよ?」
拗ねた様にそう口にした男に彼女は思わず苦笑いを浮かべそうになるのを必死で堪え、強く首を横に振り目の前の男を見つめる。
「そんなはずないでしょ。」
「だよな。」
彼女のその言葉に満足そうに微笑した男は更に顔を寄せると、静かに唇を重ねる。
ちょうどゴンドラは最も高い場所を回ったところで窓の外には色とりどりの光に彩られた大阪の美しい夜景が広がっていた。
そんな中で静かでロマンティックな時間が二人を包み、ゆっくりと静かにゴンドラは地上へと降りていく。
そうして約十分後、地上に降りたった二人は愕然とした。
『怪盗キッド参上予告』
そのニュースで街は沸き立ち、いち早くキッドを見ようとダイヤモンドポイントに向かおうと群衆が駆け足で前を通り過ぎて行き、そこには険しい表情をした制服警官が入り混じる。
そんな中で二人は立ち尽くした様に呆然としたまま呟き合った。
「もしかしてあれって・・・。」
「マジでキッドだったのかよ!?」
そう目を大きく見開いて二人は顔を見合わせる。
「怪盗キッドって・・・。」
「本当にいたんだ。」
そう呟く二人の声を聞いている者は誰もいなかった。