「快斗、知ってる?」

僕は顔を上げた僕は少し離れた場所にいた快斗へと視線を向ける。

「僕は人を殺してる。」

そう口にした僕から目を逸らさずに快斗が頷く。

「ああ。」

そう言って快斗は頷くと、軽く息を吐いた。

「言ったろ?オレの家の地下室にスザクが落ちてきた時にドンッ・・・って、物凄い音がしたんだ。だから、部屋に運んだ後で骨折れたりとか怪我とか・・・。そういうのがないかって軽くだけど見させてもらった。その時に気づいた。体中至る所に細かい傷が残ってるし。細身で服の上からじゃわからなかったけど、すげぇ鍛え上げられた筋肉と均整の取れた体つき。どう考えたって裏でメカいじってる・・・ていう体じゃない。前線で常に戦ってる人間の体だろ、それって?」

快斗はそう言ってからもう一度僕を見て言った。

「スザクが軍にいるっていうのは聞いてたし。スザクがいるのはああいう世界だし。だったら、そういう事もある・・・って思ってたから。」

「そうだね。軍に所属するっていうのはそういう事だから。僕の同僚・・・になるのかな?その人が言ってたよ。日常で人を殺したら罪になるけど戦場で人を殺しても罪にはならない。それどころか殺した人間の数だけ大きな功績として讃えられるんだから・・・って。」

僕は何も言わずにただ僕を見つめる快斗を見て淡々とそう口にする。

「僕はたくさん人を殺してる。何千万・・・ていう人達が僕のせいで死んだ。でも、僕はそれよりも前にもっと大きな罪を犯してたんだ。」

僕はそういうと、神社の本殿の更に奥へと視線を向けて言った。

 

「僕は父を殺した。十歳の時に・・・ね。」

その瞬間、初めて快斗が表情を変えた。

驚愕して愕然とながらも、とても悲し気に唇を噛み締める表情。

僕はそれを見ながら少しだけ目を細めて笑った。

「やっぱり、快斗は優しいね。」

そう口にした僕に快斗が顔を伏せて何も言わずに首を横に振る。

僕はそんな快斗にもう一度微笑を向けて。

そして話し続けた。

「どうしても守りたいモノがあって。その為に父さんは生きていちゃいけない・・・って思った、その瞬間。僕は手に持っていた真剣で父さんを刺し殺していたんだ。」

僕はそう言いながらその時の事を思い返す。

「その事に気づいたまわりの大人達は父さんが死んだ事をみんな口裏合わせてなかった事にして。だから父さんはずっと療養中のままブリタニアとの戦争を指揮していた事になってる。それで、軍部の暴走を止める為に自決した・・・って。日本人の間では英雄扱いだったけど、実際はそんなんじゃなかった。負けるのがわかっててブリタニアとの戦争を始めようとしてて、その為にルルーシュとナナリーの事も利用しようとしてた、最低な人だよ。」

「それって・・・。スザクの守りたかったモノってまさか・・・。」

言い掛けた快斗に僕は即座に首を横に振る。

「父さんは最低だけど、僕はもっと最悪な人間だ。狭量な価値観に囚われて未熟な自分の力を・・・暴力を行使した。そうして実の父親を殺したんだから。」

僕はそう言って少しだけ苦笑いを浮かべる。

「今思うと、たぶん残されたまわりの大人達にとっては、父さんがいなくなったのが都合のいい事だったんだろうな。誰も僕の事を責めずにひたすらみんなで嘘を吐き続けて。だから僕は誰にも罪を咎められる事もなかった。だけど・・・。」

「自分に嘘はつけない。」

快斗がそう言って顔を上げた。

「快斗・・・。」

「誰も責めなくたって、お前はお前の中でお前を責め続ける。」

快斗の言葉に僕は頷く。

「それは・・・余計、辛いだろ?」

そう言って切なげに目を細めた快斗に僕は少しだけ息を吐いて微笑した。

「そうだね。」

そう言うともう一度顔を上げて快斗を見つめる。

 

「快斗も・・・そうして責め続けてるの?自分を。」

問い掛けた僕に快斗が頷く。

「誰も問わなくたって。自分の中からその罪が消える事はない。そういうもんだろ?」

「うん。」

僕はそう頷いて快斗に言った。

 

「快斗に嘘は吐けない。だから快斗・・・もう少し聞いてくれる?」

問い掛けた僕に快斗が深く頷く。

「もちろん。」

「ありがと、快斗。僕はね・・・。」

そう言い掛けて少しだけ間をおいてから僕は快斗の目をまっすぐ見つめて言った。

 

「ルルーシュを殺したんだ。」

その瞬間、時間が止まったみたいに世界からすべての音が消えた。

僕はそんな事を思いながら、目の前で目を見開いて凍りついた様に動きを止めた快斗をただ、何も言わずに見つめていたんだ。