出逢ったころの和希は、結婚もしていて
子供さんもいた。
私にも夫と子供がいた。
和希は仕事をしながら論文を書いて、
学会でも発表していたよね。
私よりも10歳年上で、いろんなことを
知っていたよね。
そんなあなたをみんなが応援していた。
論文に没頭しすぎて、家庭とは別の
マンションを借りていたね。
「別居はしてるけど離婚はしない。
面倒くさいから。」それが彼の
口癖だった。
人に頼られることを嫌うくせに、
相談されたら放ってはおけない。
一人の時間が好きだけど寂しがりや。
だから、寂しくなったら婚外恋愛をして
いたのかな。
周りから見たら、なんてひどい男。
それなのに、大問題にはならない(笑)。
本当不思議。
病院て、こんな関係をよく見かける。
正当化するつもりはないけど、仕事さえ
してくれてたら、周りとしては
文句はない。
そんな時、和希から、
「伊藤ちゃんの送別会やるから来て。」
声をかけられた。
面倒くさいといいながら幹事をやる。
彼らしい。
送別会に行ったら、4人しかいなかった。
でも6時間も盛り上がった。
みんな、どのくらい飲んだのかさえ
覚えていない。
私は車だったから、一滴も飲まず…。
飲まなくても飲んでるように楽しめる。
それが私の特技。
気がつくと、私の膝に横になっている
和希がいた。
幸せそうな顔をしながら、私に向かって、
「優里はさぁ、昔は何とも思わなかった
けど、カッコつけてたし。でもさぁ、
すげーから、尊敬してる…。」と
言って眠ってしまった。
正直、噂にされたくないからやめてくれと
思ったけど、同時にかわいいとも
思ってしまった。
こうやって、女性のことを沼らせるんだな。
そう感じた。
20時から始めた飲み会も、日を超えて
2時になった。
ようやく解散となり、和希と愛ちゃんは
私の車で送ることにした。
そして、ついに来てしまったのだ。
その時が…。
突然、和希が手を繋いできた。
手を繋いだ瞬間、見えてしまったのだ。
これは前世なのか?
断片的だが、脳裏に映像が浮かぶ。
同時に愛しさと苦しみの感情に
押しつぶされそうになり、慌てて
手を離した。
そして感じた。
私は人生の選択を間違えたのかも
しれないと。