起動戦士ガンダム
Absolute Knight
Episode 3
「IRIS」
ーノウズ島格納庫
「なぁ、ヴェガ姉さん。
兄貴とはいつ結婚すんだ?」
ニムの頬が少し赤くなる。
「さぁねー、ニムはまだ
17歳で結婚できないからねー。」
「おい、アーク。
あまり兄をからかうな。」
「へへっ、兄貴顔赤くなってんじゃん。」
「あははっ、
ニムったら可愛いとこあるのね。」
「お前ら…」
他愛もない会話が格納庫に響いていた。
ヴェガが仲間に加わってからは
今までとは違う柔らかな空気が流れていた。
ー「で、これからどうするんだ?」
アークの急な問いかけに
ニムの面持ちが渋る。
「問題はヴェガだ…。」
「ヴェガ姉さんには、
俺らが出撃している間は
待っててもらうしかねぇじゃん。」
「それなら大丈夫よっ!
私、自分の機体あるから!」
「「なんだって⁈」」
「まぁ…まだ設計データ段階だけど…」
「…だ…だよなぁ…マジ焦ったわ…」
「あぁ、…だが設計データは
どこで手に入れたんだ?」
「これはねぇ、Absolute Knightの
研究所から持ってきたの!」
「ちょっと待て…
そんな簡単に持ち出せるはずがない。」
「新人研究員の研修に紛れ込んだの。
ニムの情報が目当てだったんだけど
それはあっさり手に入ったから
ついでに最新の技術も持ってこうと思って
持ってきちゃった!」
「そうだったのか…」
「ヴェガ姉さんマジすげぇな!」
「で、そのデータとやらは
どんなものなんだ?」
「ちょっとパソコン借りるね!」
画面に映し出されたのは
槍を2本装備した白兵専用機と思われる
純白の機体だった。
背部には最新式の推進機能を有する
起動装置が搭載されていた。
「…なんだこいつは⁈」
「第4世代⁈」
核エンジンで動くニム達の機体と違い
この機体は太陽光で動く機体だった。
機体のパワーはさほど変わらないが
稼働時間は、理論上ほぼ無限と言っていい。
「私これ乗りたいなぁ。」
「…いや、ダメだ。
君を危険な目に合わせる訳にはいかない。」
「私だって腕はあるのよ。」
「ヴェガ姉さん、
モビルスーツに乗ったことないだろ?」
「これでも私、
研究員の中ではトップだったのよ?」
「そんな馬鹿な⁈
この3年間でマスターしただと⁈」
「厳密に言うと特訓したのは1年よ。」
「…ありえん。」
「じゃあ、俺と模擬戦やって決めようぜ!」
「お!相手になるわよ。
アークなら1分で倒せるわね。」
「言ったな、ヴェガ姉さん。
兄貴、条件は
3回戦ってヴェガ姉さんが全勝したら
俺らの戦列に参加、でいいか?」
「…全勝かつ内容次第だな。」
「まぁいいわ!決まりね!」
ーノウズ島海上。
ニムは海岸に立ち
2人の機体と無線で話していた。
「どうだ?機体にはだいぶ慣れたか?」
「このヴレイジングって機体すごいよ…
こんなに融通が効く機体は初めて。」
「お父様のヴレイジングから
かなりブラッシュアップしてあるからな。
アーク、そっちはどうだ?」
「あぁ、いつでもいいぜ。」
アークの駆るガンダム トライフルは、
ファトュムを外した状態で
背部の起動バインダーのみを装備していた。
「よし、ではルールの確認だ。
射撃は禁止の白兵戦のみの戦闘だ。」
「「了解!」」
「それでは…はじめっ!」
ヴェガ機が一気に間合いを詰める。
それからは一瞬の出来事だった。
アーク機とヴェガ機の
剣がぶつかった瞬間、
巧みな剣さばきで
アーク機のロングソードを弾き飛ばし
刃を消したサーベルを首元に突きつけ
早々に1回戦が終了した。
「……それまで…。…タイム10秒だと…⁈」
「この俺が圧倒された…
この感覚…あのサーガと同じだ…。」
「えっへん!私強いでしょ?」
「あぁ…正直驚いた。だがまだ分からん…
続けて2回戦…、はじめっ!」
ー合図と共にヴェガ機が
再び間合いを詰める。
さすがにアーク機に同じ手は通じず
つば競り合いになる。
「ふふ…やるじゃない。
でもやっぱりアークは単純ね。」
ヴェガ機はサーベルの刃を消し、
バランスを崩したアーク機がよろめく。
その刹那、
ヴェガ機がアーク機の背後に回り
「あ…兄貴…ヴェガ姉さん強ぇぞ…」
「あのアークがここまで圧倒されるとは…」
「もう決まりでいーい?」
「いや、最後は俺が相手になる。」
「マジで⁈でも兄貴、機体どうすんだ?」
しばらく沈黙が流れる。
「…今から作る。」
ニムが小さな声で言った。
「はッ⁈今からって
意味分かんねぇよ。」
「…それは私が戦線に参加するで
いいって意味かな?」
ヴェガが笑いを堪えながら言った。
「そうだよ、完成して模擬戦やって
兄貴が勝ったらどうすんだ?」
「そうなった場合、機体が余る。
仕方なくヴェガには出撃してもらおう。」
ニムがむすっとした表情になる。
「……兄貴って意外とツンデレなんだな。」
「ニムってやっぱり可愛いとこあるのね。」
2人の笑い声がノウズ島に響く。
「いいから戻ってこい!
早速始めるぞ!」
ーそれから3カ月。
「ふぅ…完成だ。」
「すごいね、最新の推進器を
たったの3ヶ月で作っちゃうなんて…」
「力仕事は全部俺だったけどな!」
「アークはそういうの得意でしょ!」
ヴェガがにっこりと笑う。
「ヴェガ、こいつの名前を
決めてやってくれ。」
「え…唐突だなぁ。
うーん…と…。
よし!決めたっ!アイリス!」
「なぁ、アイリスってどういう意味だ?」
「アイリスは神様の名前。
虹を司る神様なんだ。
いつかこの世界に
平和と言う名の虹を掛けたい。
だからアイリスって名前にしたの。」
「ヴェガ姉さんらしいな!」
「よし、決まりだな。
アイリスで登録しておく。」
「あいよっ!」
【VE-01S GUNDAM IRIS】
ー「さぁ、兎にも角にも機体テストだ。
設計データに無かったものを
いくつか搭載してあるからな。」
「うん!
でもどうせなら模擬戦やろーよー。」
「そうだよ兄貴ッ!
そっちのが分かりやすいって!」
「…分かった。
では3カ月前の続きといこうか。」
「やったぁ!」
ー再びノウズ島海上。
「ルールは前回と同じだ。」
「おーっし!了解っ!」
「いくぞっ!」
合図と同時に2機が向かい合っていく。
そして凄まじい轟音と共に
火花が飛び散る。
「あれはヴレイジングガンダムの
強格闘兵装Hカレトヴルッフ…
兄貴の奴本気じゃねぇか…」
しかしヴェガの駆る機体、
【ガンダム アイリス】も
負けてはいなかった。
「これならっ…!
両刃槍GNパルチザンッ!」
ガンダムアイリスは機体と同サイズの
両刃槍を2本同時に軽々と操っている。
そして、
ヴェガの不規則なランス攻撃が始まる。
「くっ…やるな…、だがッ!」
ヴレイジングはHカレトヴルッフを
もう一振り手にし、二刀流となった。
再び2機が激突し
激しいつば競り合いになる。
「ニム、これはどうっ?」
アークとの第2戦同様に
ランスの力を抜きヴレイジングの
機体バランスを崩そうとする。
しかしニムには通用せず
ランスを突きつけられた瞬間に
高速変形でそれをかわす。
そしてそのまま旋回し、
一気に間合いを詰めると
今度はハイパービームソードを構え、
そのまま突進していく。
間一髪の距離でアイリスはそれをかわし
再び距離が開く。
「すげぇ…兄貴相手に互角じゃねぇか…」
2機は距離を保ちつつ
様子を伺い合う。
そして互い動きが止まった時、
ニムの機体へ通信が入る。
「ニム、とっておき…いくよっ!」
【バーストモード発動】
「やはり来たか…
ならばこちらも…」
【オーバーロードモード解放】
雷鳴のような地響きが鳴る。
「ちょ…ちょっと待った!
これじゃ島が沈んじまうぞ!」
慌ててアークが止めに入る。
「…そうだな…。
すまん、つい熱が入ってしまった…。」
「…そ…そうね…。」
「引き分けでいいか?」
「しょうがないなぁ。
それで勘弁してやろうではないかっ!」
「くっ…なぜこんなにも悔しいんだ。」
「島が消えるよりいいだろ…兄貴ィ…」
また3人の笑い声が島に響いた。
ー格納庫内。
ヴェガが額に流れる汗を拭きながら
当然切り出す。
「そうそう。
私、研究所でAbsolute Knightの
とんでもない秘密知っちゃったの。」
「とんでもない秘密…?」
「うん。たしか…
サーガ…って人のことだと思う。」
2人は身を乗り出して口を揃えて言った。
「「サーガだとっ⁈…」」
ーー続く。


