機動戦士ガンダム
 Absolute Knight
-Episode zero-


新暦0023年 12月9日
その日僕は父に呼ばれ
王室へ来ていた。
話があると言うが
だいたい予想はついていた。

…「戦争が始まる。」
何故かそう感じていた。
昔から何かと勘が冴えてはいたが
今回は今までとは違い
より鮮明に感じた。
なるほど、
やはりそうか。
父の面持ちが重い。
…心臓の音が聞こえる。
次第に汗が流れ始めた。
父が席を立ち近づき始める。
そして僕を抱き
そっと口を開く。

「ニムよ…
これから戦争が始まる。
もし私が死ぬような事があったら
お前が母さんを支えなさい。
お前は誰よりも強い子だ。
だから必ず生き延びなさい。

すまない…。
このような戦火にお前や母さん、
そしてまだ10歳と満たないアークを
巻き込んでしまった事を
私はとても後悔している。
このような父であることを
許してくれ…。」

僕は強く父を抱き締めた、
この世の理不尽さに怒りをぶつけるかのように。
なぜならこの戦争は、
決して父のせいではなく
全て奴らの仕業だということを
理解していたからだ。

ーAbsolute Knight
奴らは次元を切り裂き
こちらへやって来るなり
突然戦争を引き起こした。
強国の代表を唆し
発展途上国をも巻き込み
第4次世界大戦を勃発させた。
だが
ナディウス王国と一部の国は
戦争には参加しなかった。
強国の誘いを頑なに拒み、中立を保った。
そして世界大戦が終わり弱った国々を
Absolute Knightは次々と占領していった。
各国はなす術もなくただ従った。
奴らは国を立て直す事と引き換えに
Absolute Knight傘下へ下る事を提案した。
弱り切った各国は従う他に手段が無かった。
そして大量の血を流した世界大戦に対し
無血で国々を占領した彼等は
やがて神と崇められた。
それも全て奴らの計画だった。

次にAbsolute Knightは
最後に残った国で結成された
ナディウス王国連合国軍を攻めてきた。
世界大戦で国を焼かれた中立国は
ナディウス王国に身を置き、
連合国軍に参加していた。
奴らは
まだ正常に機能し切れていない
連合国軍の現状を見計らっていた。


ー今まで聞いた事がないサイレンが鳴り響く。
「ナディウス王国の全国民及び
連合国各国民に告ぐ。
たった今Absolute Knightがナディウス王国に向けて
進軍を開始したと情報が入った。
直ちにシェルターへ避難せよ。
繰り返す……」

父は僕の肩を強く掴み
険しい顔で真っ直ぐこちらを見ていた。
「さぁ、お前も避難しなさい。」
『お父様は避難しないのですか?』
「私にはまだ、
やらねばならぬ事がある。
おい、親衛隊長!」

僕は親衛隊長に連れられ避難した。
シェルターへ向かう道中、
格納庫で父の姿を見た。
父は
赤と白と金に彩られた機体に乗り込んでいた。 
僕は夢中で魅入ってしまった。
『あれは…ガンダム…?』

かすかに会話が聞こえてきた。
「本当によろしいのですか?」
「あぁ…
これから未来を背負って立つ私の息子達に
強い父の姿を見せねばならんのだよ。
先刻別れは告げてきた。
覚悟はできている。」
「分かりました。
それでは発進シークエンスに入ります。」
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親衛隊長に腕を引かれ我に帰る。
「行きましょう。
……国王様は本当にお強い方だ。
奴らが次元から現れた時から
国王様は戦争になる事を予見し、
機体操縦の方法をよく軍隊長に聞いていました。
奴らが現れて3年間欠かす事無く
国王様は訓練をされていました。」
『お父上が…?』
「えぇ。
そして私によく話していました。
《私の生き様を見て
息子達が少しでも強い人間になれるのなら
こんなに嬉しい事はない。》と」
『そうだったのか…。
ずっと家庭を顧みず
国を第一に考える人だと思っていた。
今日会ったのも何カ月ぶりだったか。』
「国王様はその時が来るまでは言うな、と
おっしゃっておりましたから
ご存知でないのも無理はありません。」


ーシェルターへ着くとアークがいた。
『アーク、無事だったか。』
「兄上も、よくぞご無事で。」
『母上の姿が無いが?』
「ニム様、アーク様、
王妃様はすぐに私がお連れします。
しばしお待ち下さい。」

それから何時間が過ぎただろうか。
シェルター内のテレビには
闘う父の姿が映っていた。
戦局は優勢とは言えないが
あのガンダムだけは
Absolute Knight軍を圧倒していた。
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ードアが開く音がした。
慌ててそちらを見ると
そこには片腕を失くした母が立っていた。
『どうされたのですか、母上!』
「ごめんね、ちょっとね…。」
「王妃様をお守りする事ができず、
申し訳ございません!ニム様、アーク様!」
母の後ろには
身体中を銃で撃たれた親衛隊長が立っていた。
さらにその後ろにAbsolute Knight軍の兵士が
銃を構え立っている。
その刹那、
親衛隊長は母を庇い銃殺された。
そして母は大声で叫んだ。
「必ず生き延びなさい!
生きて明日を迎えなさい!
たとえ辛く苦しくても
あなた達は必ず幸せになれるわ!
あなた達と過ごした時間が
私にとっての幸せになったように…。」
母はうっすらと微笑み
外側からシェルターのロックをかけた。
そして爆音が鳴り響いた。
テレビを見ると
自分達のシェルターが映っていた。
そのすぐ横で
父の機体が横たわっている。
身体中をビームサーベルで溶断され
コックピットはすでに焼き尽くされ
大きな穴が空いていた…。
母も爆発に巻き込まれ
もう見る影もなかった。


新暦0023年 12月9日、
僕達兄弟は父を、母を、そして国を失った。

その日は兄ニムの15歳の誕生日だった。