今年8月、厚生労働省が最新版の「医療給付実態調査報告書」を公表しました。
やはり年齢が上がるにつれ、病気になるリスクが高くなることを顕著に示しています。
特に気になるのが、よく耳にする「三大疾病」という言葉。
ご存じのとおり「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」のことで、日本人の死因の半数以上を占めています。
中でも「がん」の死亡率は、男性の4人に1人、女性の6人に1人(国立がん研究センター2014年データに基づく統計)という高さ。
生涯でがんと診断される確率は男女ともほぼ2人に1人。
つまり、あなたか私のどちらかががんにかかるかもしれないということです。
日進月歩の医療技術により、がんは「不治の病」から「うまく長くつきあう病気」へと変わりつつあります。
そうは言っても人は、がんなどの重い病気にかかった時、ショックを受け、不安に苛まれるものです。
自分はこれからどうなってしまうのか、治療の期間や費用はどのくらいかかるのか、働けなくなったらその間の生活は、そして家族は。
そんな時、気になるのはやはり先立つもの、治療にかかる費用のことでしょう。
今はインターネットのサイトでも、がんの種類や進行度を入力すると治療にかかるおおよその費用を算出してくれますが、やはり公的な数字を確認しておきましょう。
健康保険の医療制度は、70歳未満であれば入院・外来ともに、かかった医療費総額の3割を自己負担する仕組みになっています(70歳以上は1割負担)。
「がん」の場合、種類や進行度、治療法などにもよりますが、表からもわかるように1回の治療でおおよそ20万円前後の自己負担が必要となります。
ただし、その自己負担額が表3の「ひと月あたりの自己負担限度額」を超えると、その超過分が「高額療養費」として支給されます。
では、「がん」と診断されて1か月の療養が必要となった場合、実際にどのくらいの費用がかかるのか、ある中年のサラリーマンの場合でシミュレートしてみましょう。
このケースの場合、病院の窓口で支払わなければならない自己負担額は、入院時と外来時の医療費76万円の3割負担(=22万8000円)に、入院中の食事などの自己負担額(=2万5000円)を加えた25万3000円です(表4(1)+(2))。
Aさんはその額を準備して、支払いをすることになります。
ただし、医療費に対する自己負担額(22万8000円)は、前掲の表3から算出した自己負担限度額(8万5030円)を超えているため、「高額療養費」の支給申請をすることができます。
Aさんは高額療養費の支給申請をすることで、約14万3000円(表4(4))が戻ってくることになり、費用の負担を大幅に抑えることができます。
この制度については、ご存じの方も多いかもしれません。
ところがこの制度、きちんと理解していないと“損”をしてしまうことがあるのです。
それは、療養期間が月をまたぐ場合です。
高額療養費は月単位の申請を基本としているために起こります。
役に立つのが「限度額適用認定証」の利用。
これは“高額療養費の事前申請”とも言える制度です。
加入している健康保険組合などに、あらかじめ「限度額適用認定証」を発行してもらい、それを病院の窓口に提示すると、支払いが自己負担限度額(今回は8万5030円)+保険外自己負担額(同2万5000円)で収まる、というものです。
これを利用すれば、窓口の支払い時点で還付される分を差し引いた金額となり、Aさんの支払いは約11万円で済むのです。
準備しなければならない金額が減っただけでも、家計の負担は随分軽減されるでしょう。
但し、制度を知らなかったり忘れていたりして、事前の申請をしなかった場合や、別々の医療機関にかかったものを世帯合算したりする場合は、「限度額適用認定証」を利用することができませんので、ご注意ください。
高額療養費の制度を利用したとしても、重い病気の療養にかかる費用はやはり高額です。
会社勤めの方の場合、会社を休みその間は無給という雇用形態だと、家計へのダメージは大きなものとなります。
そんな時には健康保険の給付金である傷病手当金が一助となります。
傷病手当金を請求すれば、1日あたり日給の約67%相当の給付金を受けることができます。
但し、次のような要件があります。
・業務外の理由による傷病で療養中であること
・連続3日間を含み、4日以上働くことができないこと
・休業期間中に給与の支払いがないこと(支払いがあっても、手当金より少ない場合は差額を支給)
これらすべてを満たした時に、給付金の請求をすることが出来ます。
傷病手当金は非課税なので、何も引かれることなく満額が支給されます。
但し、月々の給与から天引きされていた健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料は免除になるわけではありませんので、休んでいる期間分も会社に納める必要があります。(三戸 礼子)


